愛媛県では、下記3つの観点から、デジタル・ソリューションと関連技術(AI,IoT,ロボティクスetc...)を愛媛県内事業者・自治体等に実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を2022年度スタートしました。
2023年度採択事業者の実装結果をご紹介します。
「Digital Kids Club(デジタルキッズクラブ)」が今年度愛媛県今治市で進めるのは、子どもたちの第三の居場所づくり。その居場所を、最新のITに触れることができるデジタルクラブ活動へと誘導し、子どもたちが将来「ITを仕事にしたい」と思ったり、新たな興味関心、そして可能性を広げるきっかけづくりを行っている。
2024年1月25日にフジグラン今治に「Digital Kids Club今治」をオープンし、今治市内の子どもたちを中心にITに触れられる新たな機会を提供してきた。
この記事では、今年度の同社の取り組みとその成果についてレポートする。
Digital Kids Clubとは?
元々エンジニアである代表の西脇さんは、義務教育におけるIT教育のあり方や、子どもたちのITに対する向き合い方について課題感を感じ、その一方で「デジタル教育を通してこれからの時代に活躍できる子どもたちを育てたい」という可能性と使命感を持って、無料でITに触れられる場所として「Digital Kids Club」を立ち上げた。
「すべての子どもたちに、テクノロジーに触れ自己肯定感を感じられる場所」
子どもの内から湧き出る探究心や興味関心などの「気持ち」を大切にしたデジタルクラブ活動。子どもたちの考えや想いや発想を引き出す触媒としてデジタルを利用し、子どもたちの表現活動の幅を広げ、施設は子どもたちの居場所となるあたたかな場所づくりをしている。
<Digital Kids Clubの3つの特長>
●いつでも無料の居場所
・8~18歳までを対象に、無料で施設を使うことができる
・高校生や大学生のメンターが常駐している
・大人の管理者がいる
●最新デジタル機器の充実
・ドローン、デジタル楽器、3Dプリンター、パソコン、動画撮影機材など、多様なデジタル機器を用意
・好きな機器を選んで技術を磨き、自由に作品作りができる
●デジタル・ITで活躍する大人と交流ができる
・子どもたちに長期的な目線でデジタル技術に興味を持ってもらうためには、自分の将来を想像できるような大人との出会いが必要不可欠
・日本や世界で活躍するエンジニア、デザイナー、クリエイターとの交流の場を設ける
・子どもたちに新たな視点を提供し、やる気を引き出す。来館する大人たちも、子どもたちとの触れ合いを通して新たな刺激を得ることができる
デジタルクラブ活動を通して、「自己肯定感の醸成」「行動決定の支援」「行動の達成」といった成長サイクルを育み、最終的に、子どもたちの人生に変化をもたらすことができると西脇さんは考えている。
「Digital Kids Club 今治」の立ち上げ
本事業では今治市内に「Digital Kids Club 今治」(施設)の立ち上げを行った。子どもが集まりやすい場所、子どもだけでも来られる、親も買い物のついでに来られるなど、いくつか条件をクリアしているショッピングモールにオープンすることに決まった。
施設の内装もアルバイトとして協力してくれる地元の高校生・大学生のアルバイトメンターと一緒に決め、施設の入り口にかかったオレンジ色のクリアなビニールの暖簾でワクワク感を表現した。「地域のための場所作り、最初の一歩は自主施工が可能な範囲で。自分たちの手で何かを作り上げることができることを、空間を通して子どもたちにも伝わると良いなと考えました」と西脇さん。総勢15名ほどで作り上げたという。
2024年1月25日にオープンし、水・木・金・土の週4日営業した。利用者層でいうと小学生が一番多い結果となった。
実際に施設を利用した子どもの親からは
・iPadを使って体験したことで、本人がもっとイラストをやってみたいと思っているので、どこか教室を探そうかと思っています。今ある体験以外により充実したものが増えるのであれば、有料化もありではないかと思います。
・いろんな場所で開催してほしいです。
・3Dお絵かきペンで作った星を従兄弟にプレゼントしていました。従兄弟たちも体験してみたいとウズウズしているようです。
・珍しい体験ができる場所があり嬉しいです!
・作ったものを持って帰り家でも遊んでいます。近くを通った時に、またしたいと言っていました。
などの喜びの声が挙がっている。
今後も継続して無料で営業していく予定だが、それを実現するための経営計画を考えることが課題である。たとえば、この活動に共感・協力してくれるスポンサーなどを探したり、イベントで収益を得るなど、この施設をより多くの子どもたちに利用してもらえるために検討していく。
誰でも気軽に参加できる体験イベントの実施
また、今回の事業ではイベントを開催し、より多くの子どもたちにITの面白さを知ってもらうことも重要なミッションとしている。今年度は全部で3回のイベントを開催した。
■2023年11月12日 松山市での体験イベント
事前予約制で開催した松山市の体験イベント。子どもたちは、「ドローンコース」と「MonsterMash + ChatGPTコース」の2コースから好きなコースを選択。
「ドローンコース」では、ただドローンを自由に触るだけではなく、安全面についての座学も交えて行い、ドローンを使っての魚釣りゲームも実施した。
■2023年11月25日 今治市での体験イベント
「イオンモール今治新都市」にて、ドローンと3Dモデリングの体験会を実施。今回のイベントでは、多くの人が集まるショッピングモールのイベントスペースでの開催ということもあり、当日の飛び入り参加なども多かった。より気軽に、子どもたちにデジタルに触れてもらえる良い機会となった。
■2024年2月17日 子どもむけ「iPadでプロジェクションマッピング」ワークショップ
同じくトライアングルエヒメの採択されている「メタ中島プロジェクト」と協力し、実施したイベント。無料レンタルのiPadを使って作品を作り、今治市のイメージアップキャラクターバリィさんのぬいぐるみに投影した。
FC今治高等学校との協力
2024年4月に開校するFC今治高等学校が実装パートナーとして協力している。同校は、学力よりも体験を重視しており、「先生は、社会で活躍する大人たち」「午後は学校を飛び出して地域で学ぶ」という点がDigital Kids Clubの考え方と共通している部分である。地元だけではなく、全国から注目される同校だが、学生たちの学校外での活動の一つとしてITに触れる時間が有意義なものになるかもしれない。実際、入学が決まっているデジタルに関心がある学生数名が施設を利用している。今後、どのような連携ができるのか検討していく予定だ。
今年度実装してみて
■FC今治高等学校 準備室 室長(校長就任予定) 辻 正太さん
FC今治高等学校では、生徒たちが自分で選択したいものを選択し、自分たちが夢中になれるものに時間を割いてもらいたいと考えています。Digital Kids Clubさんに置いてあるIT機器は、学生たちが夢中になれるものの一つになるのではと思います。すでに当校への入学が決まっている子たちが何名か利用しており、西脇さんをはじめITに詳しい大人と会話をすることで、さらに自分の夢や視野を広げるきっかけになっていると感じました。たとえば、学校に通うことができない生徒がいたとして、地域にこういった拠点がいくつかあり、学校ではなくそこで学ぶことで単位に繋がるといった、そういう仕組みも検討できたら良いなと考えています。地域の皆さんと協力しながら子どもたちの学びの場を増やして行けたらありがたいです。
■株式会社システナ 松山イノベーションラボ 課長 末包 卓也さん
私は施設のスタッフとして直接子どもたちと関わる機会が多くありました。初めて施設に来てくれたお子さんは、最初は何をしたら良いのか分からずモジモジしているんですが、まず簡単なものから作り始めて、だんだん楽しくなっていろんなことにチャレンジし始める。こういった場所を提供することで、子どもたちに好奇心を芽生えさせることができるということを改めて感じました。とても良い経験になったと思います。
■Digital Kids Club 代表 西脇 靖紘さん
イベントや施設を通じて子どもたちと接していく中で、自分の想像した以上に子どもたちの可能性を大きく感じています。「子どもたちが自分らしく入れる。やりたいことを追求できる」という環境を大人がこれからどんどん作らねばいけないと思っています。1家族だけでやるのではなく、デジタルキッズクラブなどの施設や地域が一緒に支えられるような未来を目指したいです。
また、施設運営だけではなく県内のイベントも引き続き企画していく予定なので、イベントのお知らせは公式サイト、もしくはInstagramからチェックしてみてほしい。
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