
こんにちは。みちよです。
2025年もあとわずか。
みなさんはどのような1年でしたか?
毎日がバタバタと過ぎていく中でも、心に留めている言葉があります。
それは「余裕」。辞書には “必要分以上のゆとり” とありますが、ゆとりなんて私の暮らしにはまだまだ程遠いのが正直なところ。
だからこそ、せめて料理の時間だけは丁寧に。
ダシの香り、盛り付けの間、食器を選ぶ瞬間…
そんな小さなひと手間が、バタバタしている日々の中の小さな「余白」になっています。
今回はその余白を少しだけ広げたくて、愛媛の伝統工芸である「株式会社伊予桜井漆器会館」を訪ねました。
ちょっと洒落た食器やお箸が欲しかったのです。
よく「料理は見た目が8割」と言われますが、本当にその通り。
家族に毎日おいしい食事を食べてもらうために、器にも心をこめたいと思いました。
高級のイメージが、ひっくり返る「伊予桜井漆器会館」

店に入った瞬間、店員さんが笑顔で迎えてくれて、空気がふっと柔らかくなりました。
上質な商品に囲まれた店内には、椀や箸、皿、小鉢、盆といった日用品から、漆絵パネルまでずらりと並んでいます。
正直、「敷居が高いのかな…?」と少し緊張していましたが、一つひとつ商品を見てみるとびっくり!
お箸はもちろん、コーヒーカップやお皿まで、思っていたよりずっと手に取りやすい価格なんです。
“漆器=高級品”というイメージを持っていた私は、思わず目を丸くしてしまいました。
それでは、「桜井漆器」のお話に入る前に、まずは代表取締役社長 鳥井亮良さんに教えていただいた “漆器そのもの” についてご紹介します。
漆は“日本”そのもの。つなぐ、寄り添う、あたたかい器

漆について、私もこの日初めて知ったことがたくさんありました。
辞書で「JAPAN」を調べると、「日本」だけでなく「うるし」という意味があるほど、日本は“漆の国・漆器の国”として知られているそうです。
漆には接着剤のような役割もあり、「しっかりくっついて離れない」という性質から、“末永くお付き合いできますように”という願いを込めた縁起物としても使われてきました。
人と人とをつなぐ器なんですね。
ただ、正直に言うと…「なんだか難しそう」「扱いが大変そう」というイメージ、ありませんか?
私もずっとそう思っていました。
でも、実際に教えてもらって驚きました。
漆器って、思っていたよりずっと扱いやすい!

漆器は、普通の食器と同じようにスポンジと食器用洗剤で洗ってOK。
昔は強くこすると漆がはげることもあったそうですが、今は洗剤の性能も上がっていて、軽く洗うだけで十分きれいになります。
「乾拭きしなきゃいけない」というイメージもありましたが、今は自然乾燥で大丈夫。
そしてびっくりしたのが、漆器は “湿気が大好き” だということ。
湿気を嫌う畳とは相性がとてもよく、漆器が湿気を吸ってくれるんですって。
さらに、料理を盛ったり、洗ってあげたりすることは、言うならば漆器にとっての“保湿ケア”。
使ってあげることが、一番の手入れになるそうです。
実は「使わない」のが一番よくない

思い当たる人、いませんか?
来客用の皿や、重箱を棚の奥にしまいっぱなしにしていること。
私もその一人でした。
運動会やハイキングで使う重箱は、年に数回しか出番がありません。
でも実は、これはNG!
漆器はしまい込むより、外に出して、時々使ってあげることで漆器は喜び、使えば使うほど風合いが増していくそうです。
話を聞いているうちに、“漆器には命が宿っている”そんな風に感じられるようになりました。
食を守る漆。暮らしを守る漆

漆は日本では縄文時代から使われていて、昔の人は防水性や抗菌性として生活の中に取り入れていました。
その代表が「漆器」。
木の器はカビが生えやすいため、その防腐効果として漆が塗られていた、という説もあるそうです。
そして、この抗菌力は、おせちを詰める「重箱」にも活かされていました。
冷蔵庫のない時代でも、料理の劣化を抑えて日持ちさせられたのは、漆の力が大きかったからなんですね。
最新研究でも、漆の“抗菌力”が証明されていた!

2025年、金沢大学の研究で、「漆器に付着した大腸菌が24時間後にはほぼ死滅する」という結果が発表されました。
また、福井県の漆会社の実験では、「漆に新型コロナウイルスを減少させる効果がある」ことも確認。
ほかの研究でも、漆で菌がほぼゼロになるというデータが出ているそうです。
これらを聞いて、「日常からもっと漆を使って、風邪知らずになりたい!」と本気で思いました。
実際に、伊予桜井漆器会館のスタッフさんたちも「私たち、本当に感染症にかかったことがないんです」と断言。
うちの親もそう言えば、風邪をひかない人。
思い返すと、毎朝、漆の椀で味噌汁を食べているんですよね。
「こんなことある!?」と叫びたくなるほど衝撃の事実でした。
小さな思いやりで、漆器は長生き

鳥井店長いわく、漆器を長く使い続けるいちばんのコツは、ぶつけないこと。
置くときも優しく、扱い方ひとつで寿命が大きく変わるそうです。
また万が一、漆がはげてきたり小さな傷ができた場合は、すぐに修理に出すことも大切。
早期発見・早めのケアが、漆器を一生ものにしてくれます。
逆に、欠けたり割れたりしていなければ、水につけっぱなしでも大丈夫。
漆器は思ったよりずっと丈夫なんです。
ただし、力強くゴシゴシ洗ったり、コツコツぶつけたりするのはNG。
そして食洗機は使用不可。
ここだけは守りたいポイントです。
技術は全国級、価格は日常級の「桜井漆器」

桜井漆器が比較的手頃な価格で購入できるのには、歴史的な理由があります。
約250年前、桜井(現在の今治地域)では自分たちで漆器を作るのではなく、紀州や唐津など“よそで作られた漆器”を仕入れて販売していました。
しかし、「地元で製造までできればもっと利益が出るのでは」と考えたのが、桜井漆器のものづくりのはじまりです。
“販売からスタートした”——これは日本で唯一の産地なのだそうです。
さらに桜井漆器は、石川県の輪島・山中、和歌山の紀州、福井の越前、福島の会津など、全国5つの主要産地から技術者を招いて技術指導を受けています。
おかげで、各産地の良いところを集めた“ハイブリッド型”の漆器産地として成長しました。
その結果、高級品から日常使いできる手頃な価格のものまで、非常に幅広い商品が揃っているのが桜井漆器の大きな特徴。
全国の産地と比べても、比較的安価な商品が多いのはこのためです。
また昔は、漆器がどの家庭でも数多く必要とされていた時代があり、「桜井漆器」では“月賦販売”(いまのクレジット払いの先駆け)を行っていたそう。
それだけ漆器が地域に根づいていた証拠でもあります。
意味を知ると、もっと好きになる。桜井漆器の“縁起”の世界

桜井漆器の館内には、伝統と遊び心が共存したさまざまな商品が並んでいます。
まず目に入るのが、モダンデザインの「B-japan」。
これまでの漆器にはなかったデコレーションを施し、現代の暮らしにもなじむ心地よい雰囲気が漂っています。
そして桜井漆器で人気の縁起物の絵柄にも、深い意味があります。

「馬」という字を逆さに書いたものを「ひだりうま」と呼びます。
“うま”を逆にすると“まう(舞う)”につながり、昔からめでたい席で舞われる「舞い」を連想させるため、福を呼ぶ縁起の良い文字とされています。
また、馬は通常 “人が引く” 動物ですが、逆になると“人が引き寄せられて入ってくる” と考えられ、商売繁盛・千客万来の象徴とも言われています。

カエルには、「無事帰る」「若返る」「福が帰る」という意味があり、さらに“前にしか跳ばない”ことから仕事運・出世の象徴として大切にされてきました。
桜井漆器では、このカエルを金色に仕上げ、“お金が帰る(かね帰る)” の願いを込める遊び心も。
3匹のカエルを揃えて「栄える」と読ませるなど、思わず笑顔になる仕掛けが詰まっています。

また桜井漆器の絵柄の多くには、しっかりと意味が込められています。
「値引松」
お正月の松飾りに使われる松で、切り枝ではなく“根がついている”のがポイント。
地に足がつき、成長し続けるようにという願いが込められています。

「赤富士」は、朝日に照らされて富士山が赤く染まる、希少で特別な現象。
見た人は 災厄を免れ、願いが叶う と伝えられる縁起物です。

天皇皇后両陛下が国体に臨場された際には、「桜井漆器」で瀬戸内の味を堪能されるなど、格式の高さと品質を示すエピソードも残っています。
手頃な価格で購入できる「桜井漆器」のお箸たち

本当にたくさんのお箸が並んでいて、見ているだけでも楽しい品揃えでした。
500円台〜700円台の手頃なお箸も多く、どれにしようか迷ってしまうほど。
悩んだ末に、鳥井社長にも一緒に選んでもらいました。
息子の食器洗いが教えてくれた、大切な1分

正直、私はずっと「漆器って食洗機が使えないから不便だな…」と思っていました。
でも、ある日、食後に息子が今回購入した自分の箸を丁寧に手洗いしている姿を見て、その気持ちが少し変わりました。
“ありがとう” を込めて、ひとつひとつ手で洗う。
それ自体が、食事を大切にする時間なのだと気づいたんです。
かかる時間は、ほんの1分。
でも、その1分が食卓の時間を少し豊かにしてくれるのなら、むしろ必要な時間だと感じました。
手に入れてよかった。食卓の空気が変わる「桜井漆器」

「桜井漆器会館」で悩みに悩んで、私が実際に購入したのがこの3つ。
どれも使うたびに気持ちがふっとやわらぐ、“お気に入りの食器”たちです。

木製ならではの優しい口当たりのスプーン

まずひと目で気に入って購入したのが、この木製スプーン(1,320円)。
木ならではのやわらかい口当たりで、金属のような冷たさがなく、カレーもスープもふんわり包み込んでくれます。
毎日の食事がちょっとだけ優しい時間になる一本です。

五角=合格につながる「五角箸」

息子用にと選んだのが、五角形の“縁起箸”「五角箸」(880円)。
“合格(ごうかく)”に通じることから、昔から人気のある形だそうです。
さらに滑り止め加工がされていて、とにかく使いやすいし縁起がいい!
うちの息子もとても気に入っていて、「自分の箸」という特別感もあって毎日嬉しそうに使っています。

2組合わせると四つ葉になる「ハート箸(ペア)」

夫婦で使いたくて選んだのが、このハート型のお箸(1,650円)。
可愛いだけでなく、2組を合わせると四つ葉のクローバーになる仕掛けがあって、見た瞬間「これだ!」と即決。
食卓に小さな幸せがそっと置かれているようで、見るたびに気持ちが明るくなる箸です。

気づけばいつも手に取っているカップ
そして、あか抜けたデザインが魅力のフリーカップ。
口当たりがよく、どんな飲み物を入れても不思議と美味しく感じられるお気に入りの一品です。
こんなに可愛くて上質なのに、3,850円!

一つひとつに想いが込められた桜井漆器の品々には、職人さんの手仕事の温かさが宿っています。
その器でひと口ひと口を味わうたび、忙しい日常の中にそっと落ちる、やわらかな静けさ。
そんな小さな時間こそ、きっと人生を豊かにしてくれる瞬間。
「桜井漆器」は、毎日の食卓に“ほっとする余白”を添えてくれる存在となりました。
みなさんももし、毎日の暮らしの中にほんの少しでも“立ち止まる時間”をつくりたいと思ったら、一度、「桜井漆器」の器に目を向けてみてください。
特別な日のためではなく、いつもの食卓を、いつもより少しだけ丁寧に。
その積み重ねが、きっと日々の暮らしをやさしく整えてくれるはずです。