災害時、観光客の逃げ遅れ「0」を目指して!実装結果をレポート【三井住友海上火災保険株式会社】

2023.5.13 えひめのあぷり編集部

愛媛県では、下記3つの観点から、デジタル・ソリューションと関連技術(AI,IoT,ロボティクスetc...)を愛媛県内事業者・自治体等に実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を2022年度スタートしました。

2022年度採択事業者のプロジェクトの成果報告をご紹介します。

楽しいはずの旅行中に、もしも災害に遭ってしまったら?!考えたくはないが、災害は予測不能なもの。土地勘のない観光地で被災してしまったとき、避難所までの安全なルートの誘導サービスを普及させるチャレンジを行っている三井住友海上火災保険株式会社。

2022年4月のキックオフ以降、実装フィールドである今治市で行った計4回の実装検証についてレポートする。

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住民・観光客・外国人を巻き込んだ実装検証

【避難ルート検索サイト実装検証】
今治市を舞台に実装検証は、2022年8月8日、10月19日、12月4日、2023年1月31日の計4回実施された。

<第1回実装検証>2022年8月8日:プロトタイプによる意見収集を実施。また、市役所にて災害時避難誘導サービスの操作体験。
<第2回実装検証>2022年10月19日:モデレーターによるリハーサル(避難体験)。今治城〜避難場所。
<第3回実装検証>2022年12月4日:住民による実装検証(災害疑似体験)。近見地区〜避難場所。
<第4回実装検証>2023年1月31日:観光客等(観光客12名、外国人3名を含む)による実装検証(災害疑似体験)。今治駅・糸山〜避難所。

第2回〜第4回実装検証においては、実際に災害が起こったと想定し、スマートフォンに表示される避難ルートを見ながら避難場所・避難所まで移動する、災害擬似体験が行われた。


【「避難ルート検索サイト」の特長】

避難所までのルートを示した避難ルート検索サイト。危険箇所を回避したルートを提案する

「避難ルート検索サイト」は、土地勘のない観光客でも“もしも”の災害時に、スムーズに避難できるように下記のような特長がある。

(1)災害時にフリーWi-Fiから県・市の災害情報サイトに自動遷移する
⇒同サイト経由で避難ルートサイトに移行。避難所等への避難ルートを検索し避難できる
(2)GPSから現在地が表示され、避難所等の目的地を指定すると、避難ルートが検索できる
(3)危険エリアとして気象庁キキクルとハザードマップを避けた避難ルートを検索可能
(4)ルート案内は、外国人観光客向けに多言語表記にも対応

第3回実装検証|2022年12月実施!地元民向けの避難訓練

2022年12月4日、土地勘のない観光客向けの避難訓練をする前に、土地勘のある今治市民を対象に避難訓練を実施した。今回参加したのは、近見地区の地元住民27名で、実際にシステムを利用してみての率直な意見を聞いた。

地震を想定し、「来島海峡サービスエリア管理用駐車場」を避難場所として実施。
システムの使い方はこの後紹介する観光客向けの避難訓練と同様の流れで、既に土地勘があることもあり比較的スムーズに避難することができた。

<第3回実装検証>住民による実装検証のアンケート結果

<評価>
提示されたルートに対しては、平均が4.0と比較的高めの評価を得たが、見やすさや操作のしやすさは3.5前後。サービスの満足度も3.5だった。

第4回実装検証|2023年1月実施!観光客向けの避難訓練

2023年1月31日、今治地方観光協会や今治国際交流協会の協力のもと、観光客向けの避難訓練を実施。
参加したのは、観光客12名、外国人3名等計20名。
“地震”を想定し、「JR今治駅前」と「サンライズ糸山」から、避難所である「今治公民館」(今治市北宝来町3-2-9)まで避難ルートに従って避難。

参加者に依頼したのは下記の内容。

(1)二次元コードを読み取ってもらい避難ルートページへアクセス
(2)地図のサイトが表示されたら目的地となる「今治公民館」の避難場所アイコン(以下地図の赤丸)をタッチ

(3)「ルート検索を実行します」に対してOKを選択すると避難ルートが表示されるため、避難ルートに従って「今治公民館」まで移動
(4)到着後、アンケートに回答

<第4回実装検証>観光客等による実装検証のアンケート結果

評価の平均は3.3。KPIでは、2.5ポイントと設定していたためクリアしている。

年間33万人のサイクリストが訪れる「サイクルの聖地」である今治市。そのため災害が起きた場合に、自転車で避難する人も多いと想定される。そこで、スマホを常に見なくても避難できるような、音声案内の機能なども検討すべき、という意見も出た。


■Wi-Fi基地局の現場調査について

Wi-Fi基地局(※)の安定稼働は、本サービスを利用するために必要不可欠となる。

今回の実装検証では、159施設のWi-Fi基地局の自然災害ハザードの情報調査、および11施設の現場調査を実施。
この結果、地震後停電や受電設備被災時に通信基地局の機能が継続できないおそれがあることから、非常用電源設備の導入が望まれること、あるいは地震の強い揺れにより、固定されていない機器が落下、破損するおそれがあることから、屋内AP機器の固定が必要であることなどの気づきがあった。

(※)災害時にフリー化

観光客向け避難所運営マニュアル参考事例集の作成

避難所に到着した観光客に対して、自治体側が適切な対応がとれるように「観光客向け避難所運営マニュアル参考事例集」も作成。
観光客向けの避難所運営チェックリストを作成し、他自治体の参考事例も記載することで、自己評価と改善に活用することも可能に。
今後、さらに内容を充実させていく予定だ。

実装パートナーとの勉強会を実施!本プロジェクトの軌道修正も行う

2023年3月8日、今回の実装検証でコンソーシアムを組んだ各パートナーが参加した勉強会が実施された。

実装パートナーが参加した勉強会では、プロジェクトのコンセプトや考え方の認識合わせが行われた。さらに、本プロジェクトにおける取組内容および検証結果について今治市関係部署(防災危機管理課、観光課、未来デジタル課)への報告も行われた。

■方向性の修正
さらに勉強会の中で、今後の進め方の方向性の修正、および具体的な進め方の変更などが同社より起案され、今治市も賛同した。

修正案は、以下の3つ。
・本システムの利用対象者を観光客の観点を残しつつ、市民全体に拡大する
・避難ルート検索だけではなく、災害情報をリアルタイムに表示させることで、利用者が避難する際の判断材料をより多く提供できるようにする
・対象とする災害を地震に加え台風などの水災も含めることにする

■次年度以降について
さらに、本サービスをどの世代も利用しやすくするために、らくらくスマートフォンなど、高齢者世代にも対応できるシステムの開発を行う予定だ。
さらに、Wi-Fi基地局の現場調査結果に基づく災害対策の具体化や、観光客向け避難所運営マニュアル参考事例集のさらなる充実などもさらに充実させることも引き続き行っていく。
今回の実装検証は今治市のみだったが、今後は宇和島市など他の地域でも検証していく予定だ。

もちろん災害に遭わずに旅行を楽しめるのが一番だが、旅行中に災害に遭遇してしまうリスクは0ではない。そのためにも、本サービスが広く普及することはもちろん、「もしかしたら・・・」と観光客一人ひとりの危機意識の向上について啓蒙していくことも重要だ。

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