愛媛県では、下記3つの観点から、デジタル・ソリューションと関連技術(AI,IoT,ロボティクスetc...)を愛媛県内事業者・自治体等に実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を2022年度スタートしました。
2023年度採択事業者のプロジェクトの事業をご紹介します。
1次産業の分野では、生産から出荷、販売までの各工程の中で、膨大な作業記録を付けたり、関係者とのやりとりが発生している。近年、6次産業化に取り組み新たな付加価値の創出を目指す事業者が増えているが、農産物や畜産物が生産者から消費者に届くまでの一連の流通プロセスを管理する、農業サプライチェーンの事務部門において、デジタル化が急務と言われている。本記事では、事業者のデジタル化の導入と定着をサポートする株式会社Furahiの、愛媛での取り組みについてレポートする。
農業サプライチェーンの事務部門でなぜデジタル化が急務?
受発注出荷管理、経理・総務・労務など、農業サプライチェーンの事務の仕事はデジタル化はもとより、様々な弊害から、昔から続く手作業での業務や、紙ベースでの記録、口頭での連絡など、デジタルツールを活用できていないままの事業者も多い。
その理由として、受発注先とのITリテラシーやIT活用意識の格差により、自社のみでは思うようなデータ化・IT利活用が進められないことや、金額負担の大きいIT投資コスト、過剰スペックが原因で活用・継続が困難などが挙げられる。
しかしながら、デジタル化が進まないことによって、非効率な作業が発生したり、人的ミスが起こりやすかったり、顧客や従業員満足度、競争力低下などの経営課題に繋がってしまう恐れがある。
デジタル化を進める上で存在するいくつかの壁をなくし、持続的に導入・利活用を実現するのが、今回のプロジェクトリーダーである株式会社Furahiが提供するサービスだ。
同社は、「世界中の人々の可能性や選択肢を広げる」というビジョンを掲げ、自社が扱うサービスを事業者の業務内容や困りごとに合わせてカスタマイズし、ベストな商品を提供することでIT利活用のサポートを行っている。
■株式会社Furahiが展開するサービス
主に教育・IT・採用を主軸に、以下のサービス・事業を展開している。
【Pluski(プラスキ)】
文系の学生に特化したITツール学習・就職 プラットフォーム。
【RPA coach】
DX化を推進し業務の効率化、人件費の削減を実現を目指す。
【採用ブランディング】
SNS活用支援やLP作成、採用戦略の策定などを行っている。
愛媛県での取り組みは、6次化農業法人を中心に、 その周辺の多様な1次産業従事者を巻き込んだIT活用・データ化 ・業務改善を行うというものだ。
課題解決に向けて!実装パートナー2社に合ったサービスをカスタマイズ
今回の事業において、同社が考える重要ポイントは以下の2つ。
(1)実装検証後も関係者全体が納得感をもって活用し続けられるソリューションの見極め
(2)Furahiのメンバー自らが現場に入り込み、関係者展開におけ る課題洗い出しおよび解決策の定型化
デジタル化を浸透させるためには、導入予定の事業者のリアルな課題と、その事業者にあった最適ツールを提案・提供することが重要であると考え、今回実装パートナーに選ばれた「株式会社地域法人無茶々園」と「株式会社ゆうぼく」の2社に対して現状把握と課題の抽出からスタートした。
株式会社地域法人無茶々園
「株式会社地域法人無茶々園」は、環境保全型農業による柑橘の生産と販売をはじめ、エコロジカルで豊かな地域づくりに取 り組む無茶々園グループの中で、販売、出荷物流やバックオフィス業務を担い地域の生産者と消費者・取引先を繋いでいる。
同社は、多くの生産者と情報・農産物のやりとりを行い、青果市場を通さず農産物を消費者・取引先とマッチングさせるため、日々の業務の中で多くの課題を抱えている。その中でも特に改善したい課題は以下の2つ。
<課題1>農家とのやりとりが複雑化している
【出荷】発注(出荷依頼)、荷受け案内、事故調査
【生産】営農情報、栽培履歴、生産資材の受注
【組織運営】会議などの案内、各種報告
これらの内容のやりとりは、電話、FAX、メール、LINE、対面、文書配布、倉庫へのけいじ、会議内での告知など複数の方法で行っており、管理が難しい。
<課題2>複数のシステム間を繋ぐ業務が多い
業務の中で様々なシステムを運用しており、システム間の情報の受け渡しや二重入力も多い状況。データの受け渡しや同期を、システム開発によって解決することもできるが、その分コスト がかかってしまう。
【運用しているシステム】
販売管理システム
ECカートシステム(カラーミーショップ)
受発注システム
勤怠管理システム
会計システム
生産情報管理システム(あい作)
メール共有システム
グループウェア 等
これらの課題に対して、Furahiはこのような解決策を提案した。
<課題1の解決策>発注のやりとりを「公式LINEアカウント」へ集約
様々な連絡ツールがある中で、生産者がより使い慣れたツールを活用すべきと考え、LINEを使用することに。流れのイメージは以下の通り。
各発注担当者が発注内容を決定
⇩
発注書を作成
⇩
公式LINEにて各生産者へ送信
※これまでも一部個人LINEでの運用を個別に行っていたが、公式LINEでの運用に一本化
こうすることで、公式LINEへ発注情報が集約できるだけではなく、生産者はスマートフォンでいつでもどこでも確認が可能。
<課題2の解決策>RPAで業務のロボット化(自動化)を試行
ロボットによって業務を自動化できるシステム「RPA」を導入し、業務を自動化にチャレンジする。RPAを活用するためには、システムを使うことができる社内の人材育成が必要なため、「人材の育成」もFurahiが担う。
地域法人無茶々園に対しては、上記の方法で課題解決を目指していく。
株式会社ゆうぼく
自社開発のブランド肉である「はなが牛」「はなが豚」の飼育・加工・販売、そして飲食までを一貫して行う6次産業事業者。愛媛県内の南予・中予・東予それぞれに拠点があり、広範囲での販売流通を行っている。
そんな同社が抱えている課題は、
<課題>注文方法が業者によってバラバラで紙対応も多い
多くの業者と取引があり、業者によって電話・メール・LINE・FAXなど様々な方法で注文が入ってくる状況。スタッフの作業が増え困っている。どうにか顧客情報などを一本化したいが、あまり費用はかけず、誰でも使える簡単な方法はないか?
この課題と要望に対して、Furahiが提案したのは
<解決策>「注文のWEBフォーム化」と「受注処理の自動化(RPA)」
■注文のWEBフォーム化
無料のプラットフォームを活用し、ゆうぼく専用の発注フォームを作成。発注元はこのフォームに必要事項を入力することで、注文方法を一本化することができる。
■受注処理の自動化(RPA)
普段から業務管理で使い慣れているサイボウズ社が提供する「kintone(キントーン)」とRPAのシステムを組み合わせる。kintoneに溜まった顧客データに、発注フォームの情報を自動で反映させたり、顧客と合意が取れた商品が顧客データに紐づいて登録されているなど、手入力していた部分を簡略化。
ゆうぼくに対しては、上記の方法で課題解決を目指していく。
生産者や飲食店からの理解と協力を得るために
それぞれの事業者でデジタル化を実現するためには、生産者や飲食店の理解と、協力が必要不可欠。そこで、実装パートナー2社だけではなく、Furahiの代表・川口氏も現場に足を運び、対面で生産者と飲食店に説明する場を設けることに。
地域法人無茶々園の説明会の様子。生産者の前に立ち、説明する株式会社Furahi代表・川口氏。
生産者の中には年配の方も多くいるため、スマートフォンの使い方やアプリの使い方などから丁寧にレクチャーする。
デジタルツールを使える人を増やすこと、そして日常業務にデジタルを定着させるためには、現場の人とのリアルで密なコミュニケーションは必要なことかもしれない。安価で簡易なデジタル化の実現、この取り組みの成果は、次回の実装成果レポートで紹介する。
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