
2025年7/20〜2026年1/12開催!全国から集まった「ありがとう」
愛媛県西予市城川町にある「ギャラリーしろかわ」は、地域の文化や芸術を発信する市立美術館。常設展や企画展のほか、町の特産品や自然を活かしたユニークな展示が行われています。
その代表的な催しが、1995年から続く『全国「かまぼこ板の絵」展覧会』です。食卓でおなじみのかまぼこ板をキャンバスに、子どもから大人まで、全国・海外から寄せられた作品が並びます。
今年は記念すべき第30回を迎え、展示テーマは「ありがとう」。6331点の応募作品すべてを館内に展示、入賞作や注目作品、立体作品など、多彩な“板アート”を楽しむことができます。

会場では、平面だけでなく立体作品や言葉と組み合わせた作品など、板の上に無限の表現が広がります。

身近な木の板に描かれているのは、家族への感謝や日常の風景など、気持ちのこもった一枚一枚。その素朴さとあたたかさに、思わず立ち止まって見入ってしまう作品ばかりです。

今回は、30回という節目を迎えた展覧会の見どころについて、ギャラリーしろかわの館長・森岡さんにお話を伺いました。

会場で見つけた注目作品や、ちょっとした裏話までご紹介します!
記事の最後にはチケットプレゼントの情報もありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
第30回の節目に込められた、30年分のつながり

1995年に始まった「かまぼこ板の絵」展覧会は、今年で30回目を迎えました。
そこで、この展覧会が始まったきっかけや、第1回からの感動エピソードを紹介する「かまぼこ板の絵30年の物語」コーナーがあり、「かまぼこ板の絵」展覧会の原点を知ることができます。

森岡館長は、「展覧会を続けてこられたことへの感謝の気持ちを、作品とともに届けたい」と語ります。

一枚の板に託された感謝の言葉や絵は、見る人の心をほぐし、ふっと足を止めさせてくれる力を持っています。その積み重ねが、30年という月日につながってきたのかもしれません。
会場に咲く“胡蝶蘭”。かまぼこ板でできた立体作品

会場に入ってすぐ目を奪われるのが、第30回展を記念して制作された立体の応募作品“胡蝶蘭”です。
胡蝶蘭はお祝いの花としてふさわしく、今回の展示テーマ「ありがとう」にも重なります。節目の展示として入り口で、多くの来場者の注目を集めています。作品の細やかさと迫力は写真映えも抜群です。
森岡館長は、「この応募者もこれまで展覧会を支えてくださった一人です。お祝いをかまぼこ板の胡蝶蘭でいただくのは、世界で当館だけじゃないでしょうか。」と話していました。

花びら一枚一枚はもちろん、支える鉢までも、すべてかまぼこ板を削って形作られています。木の質感を生かしたやわらかな色合いと、繊細なカーブは、間近で見ると圧巻の美しさ。
30回展ならではの華やかな作品として、会場を明るく彩る胡蝶蘭。観覧の際は、ぜひ間近でその職人技をご覧ください。
被災地・兵庫との見えない絆。第1回のエピソード

「かまぼこ板の絵」展覧会の記念すべき第1回の応募総数は10891点にも上り、予想を超える反響を呼びました。

展覧会が始まったのは、阪神・淡路大震災の年。全国に募集のチラシやポスターを送るも、兵庫県に案内チラシを送ることは控えていました。
しかし、応募数が一番多かったのは愛媛県、次いで徳島県、高知県。そして4番目に多かったのが兵庫県だったのです。
被災地の人々は新聞記事で募集を知り、避難所に届いたかまぼこを食べ、その板に絵を描いて応募しました。

「絵を描くわずかなひとときが震災前の時間に帰れた。描いているときが楽しかった」と振り返る声もあり、制作の時間そのものが応募者の方々の心の支えになっていたといいます。
実際に、兵庫県から届いたほとんどの作品には、「いい企画をありがとう」という感謝のメッセージが添えられていました。主催者は「むしろこちらこそありがとう」と胸を打たれたそうです。
「日本一短い手紙」とのコラボは、絵と言葉の力が響きあう作品に

会場では、絵だけでなく“言葉”にも注目した特別展示が行われています。それが、福井県坂井市で募集している「日本一短い手紙」とのコラボ作品です。

わずか数行の文章に込められた想いや情景が、かまぼこ板の絵と相まって、見る人の想像力をかき立てます。

短い言葉だからこそ、ストレートに届く感情があり、一つひとつの作品にストーリーが見えてきます。感謝や喜び、少し切ない思い出などが感じられ、心動かされる展示です。
一枚の板から広がる物語。印象に残る応募作品たち

会場には、プロのアーティストから一般の方が日常の中で描いた作品まで、数多く並びます。ふるさとの風景、身近な動植物、親子で過ごす何気ない時間――

題材はさまざまですが、その一枚一枚に作者の想いが込められています。

中には、子どもだからこその自由な色づかいや、大人の視点ならではのユーモアを感じる作品も。

家族や友人への感謝を表した作品も多く、言葉がなくても想いが伝わってきます。会場を歩くと、まるで何千通分もの“感謝の気持ち”が感じられます。

会場には過去の歴代大賞作品29点も展示されています。小さな板の上に広がる世界は、どれもオリジナルで、見ていて飽きません。
体育館が審査会場に!バスケコート2面分の作品を審査

日本全国および海外から寄せられた6331点の作品は、まず体育館で審査されます。

その会場はなんと、バスケットボールコート2面分の広さ。ずらりと並べられたかまぼこ板の量は圧巻です。

審査は、応募者の年齢や居住地にかかわらず、すべての作品に目を通す丁寧な方法です。審査員たちは何度も作品の前に立ち、表現の工夫やメッセージ性を確かめながら慎重に選考します。
希少な“年輪入りの板”と想いが生んだ、大賞作品

今回の大賞に輝いたのは、年輪のカーブを巧みに活かした作品「万万育む世にー」です。

かまぼこ板は木材の外側から削り出すため、年輪がきれいに残る板は非常に珍しいそう。作者は約20枚のかまぼこを購入し、その中で唯一見つけた年輪入りの板を作品に使いました。

描かれているのは、キツツキの親鳥が子どもに餌を与える姿。命を育む温かな瞬間を、木目の曲線がやさしく包み込んでいます。
作者の清水さんは「少子化の時代にあっても、次の世代へ命と希望をつなげていける世の中に、明るい未来になってほしい」という願いを込めたそうです。
素材選びから構図まで、こだわりが詰まったこの作品が審査員の心を掴みました。
館長イチオシ「習ってねぇし」に込められた力強さ

森岡館長が今年の推し作品のひとつとして挙げたのが、「習ってねぇし」というタイトルの作品です。板の上いっぱいに大胆な構図で描かれ、板をわずかにずらして貼り合わせるというユニークな手法も印象的です。

題名からも十分強い感情が伝わりますが、見る人の心にストレートに響くこの作品。技法や配色だけでなく、「習ってない」と言っている本人が描いたのではないのも面白いといいます。
館長は「作品の持つ勢いと、感情の表現が素晴らしい。見た瞬間に引き込まれた」と話していました。
海を越えて届いたかまぼこ板の絵、海外からの応募作品にも注目!

「かまぼこ板の絵」展には、日本国内だけでなく海外からの応募もあります。モンゴル、インドネシア、台湾、フランスなど、多様な国や地域から作品が寄せられました。

海外では、かまぼこ板そのものを手に入れるのが難しく、日本から送る場合には関税がかかることもあるそう。それでも、現地で工夫して板を調達し、この展覧会に参加してくれる人たちがいます。

日本のアニメ文化の人気もあり、アニメのキャラクターを題材にした作品も多く見られました。

国や言葉は違っても、板に込められた想いは同じ。「かまぼこ板の絵」を通じて、世界中から集まった想いが、会場でひとつにつながっています。
節目の30回展で、あなただけの一枚を見つけてみて!

全都道府県・海外から6331点が集まった『第30回全国「かまぼこ板の絵」展覧会』。
節目を迎えた今年は「ありがとう」を展示のテーマに、感謝や喜び、日常の温もりが込められた応募作品すべてが展示されています。
立体的な作品や「日本一短い手紙」とのコラボ、歴代の大賞作品や館長イチオシ作品など、見どころも盛りだくさん!

世代や国を超えて集まった作品からは、制作者の作品に込めた想いや背景が伝わってきます。

会期は2026年1月12日まで。ぜひ足を運んで、あなただけの“お気に入りの一枚”を見つけてみてくださいね。
『第30回全国「かまぼこ板の絵」展覧会』の情報
第30回全国「かまぼこ板の絵」展覧会
会期/2025年7月20日(日)〜2026年1月12日(月・祝)
開館時間/9:00〜17:00(最終入館 16:30)
開催場所/ギャラリーしろかわ
住所/愛媛県西予市城川町下相680番地
料金/一般500円、高校・大学生300円、中学生以下無料(団体割引なし。障がい者割引あり。)
休館日/毎週火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
駐車場/あり
お問い合わせ/ギャラリーしろかわ(0894-82-1001)
ギャラリーしろかわの基本情報

【店名】ギャラリーしろかわ
【住所】愛媛県西予市城川町下相680番地
【電話番号】0894-82-1001
【開館時間】9:00~17:00
【休館日】毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
【入館料】一般500円、高校・大学生300円、中学生以下無料(団体割引なし。障がい者割引あり。)
【駐車場】あり