愛媛県では、アフターコロナを見据え、産業の稼ぐ力の更なる強化のため、デジタル技術やロボットを実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を展開中。
採択事業者のプロジェクトの様子をお届けしています。
もしも、コーヒーや柑橘、お酒などの「香り」をデータとして可視化できたなら…?
商品を供給する側にとっては他の商品と差別化ができ、消費者にとってはより客観的で信頼できるデータを元に商品を選ぶことができる。
今回、香りを可視化する新しい概念「香度®」を使い、香りに特長をもつ特産品を多く有する愛媛県で、ブランディングを強化する実装プロジェクトがスタートした。
「香り」は曖昧で感覚的
消費者の購買行動は香りによって影響を受けることがある。
しかしながら、視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚の五感の中でも、特に嗅覚は感覚的で、個人差のあるものと捉えられている。
香りは、「糖度」のように明確な指標が存在しない。
それゆえ、産業においても香りの分野を曖昧にしか取り扱うことができず、嗅覚の鋭い人や、ワイン業界のソムリエなど、その分野において特別な訓練を行ってきた人の感覚に頼ってきた。
その香りの曖昧さを、より客観的で信頼性のあるものにしたいと立ち上がったのが、今回の実装プロジェクトの要「香度®」を商標登録している株式会社レボーンだ。
「香度®」で可視化し「香りの曖昧さ」をなくす
(チャレンジャー:株式会社レボーン)
■「香度®(コード、カオリド)」とは
香りの芳醇さを表す概念として、株式会社レボーンが考案した造語(商標登録済)。
この概念を用いることで、人間が感覚として捉えている「香り」に科学的にアプローチすることができると期待されている。
これまで、一般的な「においセンサ」で測られていたものは、においの分子の種類や濃度であり、人間が嗅覚として捉える本来の香りとは異なっていた。
そこで、官能的な概念を組み込んだ「香度®」とそれを具現化する独自技術を用い、人間が香りを捉えるメカニズムをそのまま模倣した手法でデジタル化を進めている。
どのように香りを可視化するのか?
「香度®」はレボーン独自のセンサと、AI・クラウドプラットフォームを用いて香りの特長をチャートとして可視化する。
■鼻の役割を担う!「においセンサ」
香りを特定の物質単位ではなく、全体としてとらえることのできるセンサで、対象の香りを瞬時に分析・データ化したのち、独自開発のデータ活用プラットフォームに自動送信することが可能。
■脳の役割を担う!においAI・クラウドプラットフォーム「iinoi® cloud」
「においセンサ」で測定したデータや、人の嗜好性に関するデータ、専門家の官能評価データほか、様々な種類の香りに関するデータを管理することができる。
さらに、クラウド内には数種類のAIが搭載されており、香りのデータを人間にとって価値ある解釈や表現に学習して変換する。
香度®を測定している様子
「うまく言えないけど良い香り」や「自分が好きな商品と似た香り」など曖昧な香りへの印象を蓄積した約400種類8万の香りのデータを基に、デジタル技術を用いて言語化し、定量化することができるのだ。
このように、レボーンが持つソリューションを使い、鼻と脳、すなわち「嗅覚」を再現することで、様々な課題の解決が可能だと期待されている。
日本酒「愛媛さくらひめシリーズ」から実装スタート!
(実装フィールド:愛媛県内各地)
今回のプロジェクトでは、2023年3月の一斉販売に向けて愛媛県が進める【えひめ香る地酒プロジェクト「愛媛さくらひめシリーズ」】(全22商品)の香りの可視化からスタートする。
■愛媛さくらひめシリーズとは
さくらひめ(デルフィニウム)
愛媛生まれの新品種の花「さくらひめ」を使い、産学官連携で開発した「愛媛さくらひめ酵母」から醸造された日本酒。
酵母は4つあり、それぞれ「果実の華やかさ」「穏やかな清涼感」「爽やかな酸味」「酸味と甘みの調和」と、特長のある香りを生み出す。
この香りの特長を「香度®」で可視化するのだ。
“えひめ香る”、このキラーワードに信憑性を持たせることで、愛媛県の地酒としてのブランドを確立させ、さらに国内外での認知度向上や販売促進を目指す。
また、「愛媛さくらひめ酵母」から醸造される地酒香りの比較だけではなく、他の日本酒も評価し、「日本酒香度®マップ」の作成を目指す。消費者に日本酒の新たな楽しみ方を提供する。
愛媛県の特産品である柑橘類や柑橘を餌に混ぜて育てたフルーツ魚にも「香度®」を用いて、魅力化・ブランディング化の強化も行っていく予定だ。
商品の魅力を伝える新たな指標「香度®」。
これが広く普及しすれば、香りを軸としたマーケティングのイノベーションが起こるはず。
当記事で紹介している「香度®」に関わるプログラムは検証段階にあり、今年度中での社会実装を確証するものではないが、引き続き、トライアングルエヒメ編集部は実装状況を追いかけていく。
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