愛媛県では、アフターコロナを見据え、産業の稼ぐ力の更なる強化のため、デジタル技術やロボットを実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を展開中。
採択事業者のプロジェクトの様子をお届けしています。
私たちの生活の三大要素・衣食住の一つ、「住」を支える建設業界。
ニーズが多様化・複雑化する中で、建設業は、全国的に労働生産性の停滞や労働環境の悪さ、それらによる人手不足の慢性化などに悩まされており、愛媛県をはじめとする地方部においては、特にそれらの問題が悪化する一方である。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大や世界状況の不安定化によって引き起こされたウッドショック(木材価格の高騰)や、燃料価格の高騰による生産コストの急激な上昇は、建設関連業者の経営状況を急速に悪化させている。
建築業界で普及が拡大する次世代プラットフォーム
(実装フィールド:愛媛県全域)
そのような建設業の状況を大きく改善・改革できる次世代プラットフォームとして期待されるのは、建築DX化推進のコア技術「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」。
「BIM」は、国内外で急速に普及が進んでいるものの、愛媛県内では未だその認知すら浅く、関心のある事業者や自治体も導入コストや費用対効果の実感不足などにより導入が進んでいない現状がある。
それを解決しようと立ち上がったのは、道後温泉地区での大規模プロジェクト等を手掛けた実績を有する一級建築士事務所「株式会社CHIASMA FACTORY」だ。
地域協働インフラとしてのBIM(Building Information Modelling)の導入・普及
(チャレンジャー:株式会社CHIASMA FACTORY)
■「BIM」とは
建築設計に用いられ、建設する建物の3Dモデルをベースに設計を進めることができるソフトウェア、またそれを用いて設計や生産管理を行う手法のこと。
コンピュータ上に作成した3次元の形状情報を、室などの名称・面積・材料・部材の仕様・性能・仕上げなど建築物の属性情報と関連付け、データベースとして、一元化した建築物情報モデルを構築・可視化する。
従来の「CAD」の課題と「BIM」導入の効果
従来主流なのは、設計現場で手書きしていた図面を2D・3Dでデジタル化し、設計するツール「CAD(キャド※Computer Aided Designの略)」。
この「CAD」を用いた建築設計では、平面図・立面図・断面図などの図面や、構造・設備などの要素が別々に2次元化され、複数のファイル(データ)で作成されていた。
CADの課題は次の通り。
・業者間で各図面を個別に編集するため整合が取りにくい
⇒設計ミスや施工時の再調整・工事やり直し等の原因となってしまう可能性がある
・設計初期の段階でリアリティのあるイメージ共有が難しい
・図面作成・修正・打ち合わせに時間がかかる
しかし、それを単一の「BIM」モデル(データ)に集約して、仮想空間内に擬似的に「建設」し、そこから様々な図面やデータを抽出して用いることで、生産性が向上する。
例えば…
・3Dでの設計可視化により発注者と設計者、施工者間のコミュニケーションが円滑に
・図面作成・修正時間の短縮
・大量の図面間の不整合の排除
・施工上の障害や施工困難箇所の事前チェック、解決策検討の前倒し
・モデルデータから直接数量を出力することによる数量積算等の精度アップと効率化
・ムダ、手戻り、設計変更にかかる手間の削減と、それによる工期や労働時間の短縮
企画→設計→見積→施工と直線的に進んできた従来のプロセスを転換して、設計段階からコストや主要な施工検討を折り込み、設計-施工間や異なる工種間で必要な調整を仮想空間上で済ませてしまうことで、従来のプロセスと比べて大きな手戻りや変更にかかるコスト・労力・時間を削減ができるのだ。
今後は地方の建設産業にとっても工事プロセス全体へのICT導入は避けて通れないことから、愛媛県においても、「BIM」の導入方法や課題について行政、業界団体、建設企業が連携し検討・研究を進めていくことが必要である。
そこで当プロジェクトでは、まず、アンケート・ヒアリング調査どによって県内建設産業における「BIM」の認知度・浸透度、及び導入・普及に向けた障害の具体的把握を行う。
そして、実装パートナーである「株式会社鳳建築設計事務所」や「株式会社一宮工務店」など参加メンバー企業による「BIM」の基本知識・技術の習得、実務に活かすノウハウの検討・開発、及び課題やメリットの具体的検証を実施する。
建設プロセスの中核である<設計-施工>部分にフォーカスし、実際に近い仮想の建設プロジェクトへの試験的適用とトライアル&エラーを通じて、そのような問題解決となる「BIM」利用のあり方を検討・検証する。
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