
親子3世代で読み継がれる「ねずみくんの絵本」が、やってきた!
赤いチョッキを着た、ちいさな主人公の物語「ねずみくんの絵本」。
たっぷりの白い余白に、ぽつんと描かれたねずみくんのイラストが印象的な絵本です。
みなさんも書店や図書館などで、1度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
1974年にポプラ社から発刊された「ねずみくんの絵本」は、シリーズ累計500万部をこえる大ベストセラーとなっています。
ねずみくんと一緒に成長してきたという子どもたちは、多いことでしょう!
体はちいさくても、大きくてやさしい心を持っている、国民的な人気者の特別展「誕生50周年 ねずみくんのチョッキ展 なかえよしを・上野紀子 想像力のおくりもの」が、愛媛県西予市の歴史文化博物館にやってきました!

今回は、学芸員の甲斐さんにお話をお伺いしました。
『ねずみくんのチョッキ』から始まった絵本は、人気沸騰によりシリーズ化!
50年以上も発刊が続いていて、これまでに出ている本は、なんと全42冊です。
今回の特別展には、ねずみくんを生んだふたりの著者が共作した絵本や原画、スケッチたちが約200点も集まっています。
この記事では、これから観覧される方への参考に、見所やうんちくをご紹介。
ラストでは、抽選でチケットのプレゼントもありますよ!
赤いチョッキがトレードマーク!「ねずみくん」

ねずみくんは、身長2.6cm、体重は3.9グラムの男の子です。
身長は500円玉の直径よりもわずかに小さく、体重は50円玉よりもわずかに軽いくらい。
ねずみくんは気も小さくて、これといった特技もありません。
そして、ちょっぴりおっちょこちょい。
失敗することも多いけど、誰にも負けないくらいの大きな心をもっています。

ねずみくんと同じサイズ感の「ねみちゃん」は、ねずみくんのガールフレンド。
お料理と編み物がとくいです。
ふたりはいつも、お互いを思いやっています。
ねずみくんの周りには多くのともだちがいて、いつも賑やか。
毎日、みんなで楽しく暮らしています。

ねずみくんの絵本シリーズは、全作品が同じスタイルを踏襲しています。
最小限の文章と絵、ページを縁取る枠に、広い余白。
この余白の多さは、有名な車会社の広告がヒントになりました。
まるで舞台のような白い枠の中で、ねずみくんたちは元気いっぱいに動き回ります。
そして、さまざまなエピソードを繰り広げていくのでした。

ねずみくんの絵本は、ストーリー担当のなかえよしをさんと、イラスト担当の上野紀子さんが力を合わせて作っています。
ふたりは大学の同級生で、なんとご夫婦。
25歳で結婚し、その同じ年に一緒に絵本を作りました。
特別展では、ふたりが絵本作家になるきっかけとなった作品も展示されています。
さっそく、特別展の見どころをご紹介しましょう!
ねずみくんとねみちゃんが歩いた!人気者のふたりがお迎え

特別展に入ると、入り口には大きな立体オブジェがお出迎え。
主人公のねずみくんとガールフレンドのねみちゃんです。
この特別展では2か所、撮影できる場所があります。
その1つが、この立体オブジェ。
かわいらしいねずみくんとねみちゃんと一緒に、撮影しましょう!

立体オブジェの後ろにご注目。
大きな緑の本の中で、ねずみくんとねみちゃんの姿があります。
このねずみくんとねみちゃん、なんと歩いています!
歩くスピードや歩幅、足音など、細部までこだわって作られました。
特別展でしか観ることの出来ない動画なので、ぜひじっくり観察しましょう。
ねずみくんが動く、ゆっくりとした音とリズム。
眺めているだけでも、癒されます。

こちらが、おふたりの絵本作家デビュー作の『ELEPHANT BUTTONS』です。
ふたりは1973年に、アメリカ・ニューヨークの出版社からデビューしました。
『ねずみくんのチョッキ』がポプラ社から出版される、1年前の作品です。
出版から2年経った1975年に、日本語版『ぞうのボタン』(冨山房)が刊行されました。
作家デビューのきっかけは、「ふたりでニューヨークに行くついでに、出版社に売り込みに行ってみた」とのこと。
それから、ふたりは50年以上も一緒に本をつくっています。
「ねずみくんの絵本」はじまりの一冊

『ねずみくんのチョッキ』は、もともと『Mouse's Vest』というタイトルがつけられていました。
『ELEPHANT BUTTONS』に続く作品として、ニューヨークの出版社へ送ろうと準備をしていたところ、ポプラ社の編集さんに見つけてもらい……
『ねずみくんのチョッキ』として、日本で出版されることになりました。
絵を担当していた上野さんが緊張してしまって、うっかりライオンやアシカの〇〇を描き損ねてしまったそうです。
描き忘れられてしまった〇〇を、原画で探してみてくださいね。

小さなチョッキを着ても、全然平気そう!?
そんな余裕のある表情をした、うまくんの貴重な1シーンを観ることができますよ。

他に、原寸大のラフスケッチや、『ELEPHANT BUTTONS』の絵本、作画する際に使っていたツールの位置指定紙も展示されています。
位置指定紙は、ねずみくんの立ち位置を決める枠です。
毎回、ページの中央にねずみくんが配置できるように使われていました。

「ねずみくんができるまで」のパネルには、絵本の作り方のヒミツが展示されています。
編集部に届ける、茶色の封筒に描かれているのは、とてもレアなねずみくん
ストーリー担当のなかえさんが手描きしました。
このパネルで紹介されている原画も、特別展内に展示されています。
ぜひ、じっくりご覧くださいね。
みんな違うから、面白い!ねずみくんのともだち

ぞうさん、うまくん、あしかくん…
ねずみくんには、たくさんのともだちがいます。
からだの大きさも特徴も個性も違う、ねずみくんのともだち。

どのどうぶつも、ひとりずつしか登場していませんが……
唯一、同じ動物のキャラクターとして描かれているのが、ねずみ。
『また!ねずみくんのチョッキ』で初登場した、ねみちゃんです。
ねずみくんの全作品を、年代別に紹介!

ねずみくんの絵本は、2025年で合計42冊目になりました。
一度の休息時間をのぞき、年に1~2冊のペースで新しい本を作っています。
特別展では、ねずみくんの全作品を年代別に、原画と共にご紹介。
この記事でも、いくつかご紹介します。

ねずみくんの絵本では、「チョッキ」をテーマにしたお話が何度か登場します。
同じテーマでお話を作るというのは、むしろ大変で難しいものです。
しかし子どもたちは「くりかえし」が大好きなので、頑張って作っている、となかえ先生は語ります。
子どもたちは「自分が知っていること」が繰り返されることで、ものごとを知る喜びを体験していくそうですよ。

ねずみくんはねずみくんだし、ぞうさんはぞうさん。
ねずみくんにも、とってもすてきなところがあります。
「みんながちがっていても、いいんだよ」
ねずみくんは控えめに、そう教えてくれています。
他人と比べてしまいがちな現代にこそ、しっかりと自分自身を認めてあげたいですね。

ねみちゃんの作るお菓子はどれも、とっても美味しそう!
ねずみくんやともだちの笑顔のために、ねみちゃんは一生懸命ホットケーキを作ります。
ともだちからの難しいリクエストにも、ちゃんと応えてあげられました。
発想のアイデアや閃きの大切さを教えてもらえるエピソードです。

パネル「ねずみくんのつくりかた」で登場していた原画です。
ロップイヤーくんとスプリングボックくんが、この回で初登場しました。
この絵本が、鉛筆で描かれる最後の作品です。
デジタル技術による、あらたな共作の形へ

35作目『ねずみくんのうんどうかい』を発表した、次の年のことです。
2019年に、絵を担当していた上野さんが亡くなってしまいました。
従来通りの作り方では、ねずみくんの絵本は作れません。
そこで、ストーリー担当のなかえさんは考えました。
「これまで上野が描いてくれた絵を、パソコンで加工して新しい絵を作ろう」
コラージュという形で、ねずみくんの物語は続くことになりました。

36作目『ねずみくんはめいたんてい』は、なかえさんによるデジタルコラージュの第一作目です。
第2作目の『りんごがたべたい ねずみくん』の原画など、複数作品の原画を組み合わせて作られました。
衝撃のオチは、ねずみくんの絵本シリーズでトップクラスかもしれません。

2023年に発刊された『ねみちゃんのチョッキ』は、ねずみくんの絵本シリーズ第40作目。
記念すべき40作目ということで、第1作目の『ねずみくんのチョッキ』の絵をいかして生み出されました。
ねみちゃんの表情やリボンなど、第1作目との違いを探してみてください。

目に見えないものや、想像することの大切さを描き続けてきた、ふたり。
ねずみくんの絵本を作り始めて、50周年を記念して『ねずみくんからのおくりもの』を2024年に発表しました。
心が通い合う喜びや、温かさを描いた作品です。
言葉でなくても、お互いの気持ちや行動がピッタリと合う、『阿吽の呼吸』。
今の時代こそ、相手を思いやる気持ちを大切にしたいものです。

こちらは撮影OKな『ねずみくんの表紙をつくろう!』のコーナーです。
枠の色は4種類。
マグネット式のキャラクターを、ペタペタと貼りましょう。
ねずみくんのオリジナル絵本表紙をなかえさんのように「コラージュ」をして作ってみてくださいね。
ペラペラの世界からはじまった、絵本の世界

「本当に、ねずみくんのふたりの作品なの!?」と驚くほど、テイストが違う『少女・チコ』シリーズも展示されています。
絵本『ペラペラの世界』は、ふたりが25歳だった1966年に制作し、自費出版されました。
望遠鏡を持っている、斜視の女の子『チコ』が主人公です。
なかえさんの気持ちを代弁してくれる、少女チコ。
望遠鏡を覗いたことをきっかけに、チコは不思議な世界に迷い込みます。

望遠鏡は双眼鏡と違い、片目で覗きます。
そのため、立体には見えません。
「ペラペラの世界」とは、片目で観た世界のことなのか?
望遠鏡を使うことで「近くが見えなくなっている」薄っぺらい世界のことなのか?
とても哲学的な文章と、独特なタッチの油絵。
絵に隠されたテーマは何なのか、考えさせられます。

ひときわ大きくて目を惹く、右の作品は「チコ(アニミズム会議の記録)」。
こちらは、100号キャンパスを2つ繋げた、とても大きな油絵です。
人と違うことに寂しさを感じている少女は、何を想っているのでしょうか。
すれ違っていても相手を想っていたら、それでいい

ここは、上野さんのアトリエを再現したブースです。
上野さん愛用の品々が、机いっぱいに広がり、今まさに作業中といった雰囲気。
ねずみくんは、鉛筆の濃淡で描かれています。
9HからE8までの10本以上もの鉛筆を使うことで、やわらかな線を描いていたのだそう。
鉛筆画なので、完成した原稿は吊り下げて保管していました。
アトリエシーンでは、その状態も再現されています。

「想像することは、誰かを思いやっているということ」となかえさん。
人間にしかできない「想像力」をフル活用して、豊かな人生にしたいですね。
特別展では動画で、なかえさん自身が想いを伝えてくださっています。

こちらは、ねずみくんにお手紙を届けるコーナーです。
「この特別展で、童心に戻ることができたよ」
「自分が子どもの頃にたくさん読んだねずみくんを、今は子どもと読んでいるよ」
続々と増え続けるファンからのお手紙に、ねずみくんも大喜びのはず!
紙と鉛筆が用意されているので、みなさんもぜひ参加していってくださいね。
特別展でしか手に入らない!ねずみくんのレアグッズたち

特別展限定グッズのオススメナンバーワンは、『ねずみくん もういいかい』!
この特別展のために書き下ろされた、新しい絵本です。
冊子タイプのスタンプラリーで、自分だけの一冊を作ることができます。
特別展の中でかくれんぼしている、ねずみくんのともだちをさがしましょう!

郵便ハガキとして使っても、額に入れて飾っても◎!
正方形サイズの、オシャレなねずみくんの『ポストカード』もオススメです!
ハガキの種類は、表紙デザインの全41種類。
お好きな本の表紙を選びましょう!
体験も素敵な思い出に!ねずみくんのワークショップ

小さな子どもにオススメなのが、『ねずみくんとゆらゆらモビール』!
ねずみくん柄の2種類の台紙から、どちらか選んで切って貼ります。
ハサミを扱える年頃から、チャレンジOKです。

大人にもオススメなのが、今治ハンカチに転写する『シルクスクリーンでオリジナルハンカチをつくろう』!
柄は、ねずみくんとねみちゃん、どちらかを選ぶことができます。
カラーはピンク、赤、緑、黄緑の4種類。
シルクスクリーンが始めての方でも、スタッフの方が教えてくれるので大丈夫です。
シルクスクリーン体験はなかなか出来ないので、この機会にぜひ!
目には見えないものを大切に、心豊かに生きるヒントが得られる絵本

この特別展では、ねずみくんを軸に『人生を楽しむためのヒント』がたくさん散りばめられています。
子どもよりもむしろ、大人の方が得るものが多いかもしれませんね。
特別展で気になった絵本作品は、ミュージアムショップで購入が可能です。
一緒に、お家へ連れて帰ってあげてください。
面白いことや楽しいことは、案外近くにあるし…
目には見えないことの方が、大切なこともある。
ちっちゃな体に大きな心を持つ、ねずみくんが教えてくれました。
ねずみくんに会いに、歴博へ足を運んでみてくださいね!
特別展「誕生50周年 ねずみくんのチョッキ展 なかえよしを・上野紀子 想像力のおくりもの」の情報
開催期間/4月19日(土)~6月29日(日)
開催時間/9:00~17:30
休館日/月曜日
※ただし第1月曜日は開館、翌火曜日が休館。祝日及び振替休日にあたる場合は、直後の平日が休館。
〈開催期間中の休館日〉5月12日(月)、19日(月)、26日(月)、6月3日(火)、9日(月)、16日(月)、23日(月)
観覧料/特別展観覧料…大人(高校生以上)1100円(850円)、65歳以上800円(500円)、小中学生600円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金
愛媛県歴史文化博物館の基本情報
店名
愛媛県歴史文化博物館
住所
西予市宇和町卯之町4-11-2
電話番号
営業時間
9:00〜17:30
定休日
月 月曜日/年末年始
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