
まるで絵本の世界!思わず食べてしまいたい、スイーツデコアート空間へようこそ!
幼いころに読んだ、童話の『ヘンゼルとグレーテル』に登場する『お菓子の家』に憧れを抱いた方も多いのでは?
愛媛県西予市の歴史文化博物館では、特別展「渡辺おさむスイーツアートかわいいお菓子ミュージアム」が開催中!
甘いお菓子に包まれてみたかった、幼いころの自分の気持ちに戻れるかもしれません!
見るだけでも可愛い、写真に撮っても可愛い、甘い空間へ Let's go!

今回は作品を手掛けている、現代美術作家の渡辺おさむ先生にお話を伺いました。
渡辺先生は、思わず食べてしまいそうなホイップクリームやマカロン、キャンディなどのスイーツや果物を用いて、動物や建造物の造形にデコレーションを施すアーティスト!
国内だけでなく、中国・イタリア・ベルギー・アメリカ・韓国と、世界中で個展を開催しているスイーツデコアートの第一人者です。
今回の特別展では、水族館に街や森といった様々なシチュエーションで、スイーツによるデコレーションを施し、独特な世界観を演出!
歴博の常設展にも、渡辺先生のスイーツアートが所々に隠されていて、丸一日楽しめますよ。
この記事では、これから観覧される方への参考に、見所やうんちくをご紹介。
お菓子に包まれた、優しくあたたかな記憶を呼び起こす渡辺先生のスイーツアート

渡辺先生は、昔から絵を描くのが得意な少年でした。
地元の山口では、周りの人々から
「君はアートの天才だ!」
そう言われて育ち、東京造形大学のデザイン学科へ進学します。
そして、渡辺先生は驚いたのでした。
大学には、数多くの天才たちが待ち受けていたのです。

「数多くの天才の中で輝ける、自分らしい表現は何だろう?」
渡辺先生が、自分の世界をどう表現するか考えていたときのことです。
ふと、アクリル絵画で使うモデリングペーストが目に入りました。
モデリングペーストとは、アクリル樹脂と大理石の粉末で出来た、パテ状の下地剤です。
乾くと固形化するので、絵に立体感を出すために使います。
渡辺先生はモデリングペーストを、口金を付けた袋に入れて……
まるでホイップクリームのように、キュッと絞ってみたのです!

ホールケーキの上に絞り出されたかのような、見事なクリーム。
それを見たとき、渡辺先生は幼いころの記憶を思い出したそうです。
幼いころの渡辺家の記憶は、いつも甘い香りに包まれていました。
お菓子教室の先生をしていた母親が作る、可愛くて美味しいお菓子たち。
特にホールケーキや焼き菓子を、よく目にしていたそうです。
「このフェイククリームを使って、アートしよう」
「自分が昔の記憶を思い出したように、観る人たちの楽しい・嬉しい記憶を思い出してもらえるような世界を表現したい」
他の天才たちとは一味違う、渡辺先生ならではのアートが生まれたのでした。
硬いゼリー!?ぷるんぷるんでもフワフワでもない、カチカチなスイーツたち

スイーツアートは、小さなスイーツの集合体で出来ています。
それはマカロンだったり、ホイップクリームだったり、クッキーだったり!
そうした小さなパーツをいくつも作り、色や素材感などで選んだパーツを配置して、一つの作品として作り上げるのです。
「各パーツが一体どんな質感なのか、皆さん気になりますよね」
そう笑う渡辺先生のご配慮から、特別展では作品に使用されているパーツに触れられる『さわれるコーナー』があります。
どんな感触なのか、ぜひ優しく触ってみてください。
とっても柔らかそうなのに、カチカチなギャップに驚きますよ!

「僕が作品を作る上で一番、気を付けていることは『色』です」
渡辺先生は『スイーツ色相環』という、スイーツデコ用カラーコーディネートの独自ルールを考案しました。
スイーツ色相環は、どこと合わせても綺麗で可愛い配色が可能となる優れものです。
一見、普通の色相環のスイーツバージョンにも見えますが、違います!
よく見てみると、スイーツから抽出した濃淡、クリームとチョコレートを連想させる白と茶が入っていることに気付くことでしょう。

「鮮やかさや艶やかさを、本物よりもちょっと誇張して作るのがコツ」
「誰しも思い出って、美しく脚色されていますよね」
渡辺先生の作品作りの原点に『観る人の幸せな記憶にアクセスして欲しい』という願いがあります。
そのために、あえて人の記憶に寄り添った『記憶の本物に近いフェイク』を作っているのです。
渡辺先生の作品には、幻想的でロマンチックな『Fantasy(ファンタジー)』な組み合わせが多く登場しています。
作品を鑑賞しながら、どの色相環で組み合わされているか想像してみて!
お菓子な水族館へようこそ!実際に居るかもしれない、美味しそうな水の生き物たち

お菓子のタコに、メンダコ、そしてドラゴン!?
「海の生き物の95%は未だ解明されていなくて、未知の生物と言われています」
「だとしたら、お菓子の海の生き物がいてもおかしくないですよね」
そう話す、渡辺先生の想像力が存分に発揮されている『お菓子の水族館』コーナー。
特にタコは、くねくねとした脚の表現に時間がかかったそうです。
離れて観るとタコそのものですが、近付いて観るとマカロンにアイス、チェリーにゼリーと、数多くの赤いスイーツや果物が盛り盛り!

『Auspicious』は、愛媛県ならではの鯛がモチーフにされた作品!
ちゃんと立体的になっているので、ぜひ前や横からじっくり観てくださいね。
波の躍動感や繊細な鱗は、どれもクリームによって再現されています。
クリームに交じってイチゴが隠れているなど、芸が細かい!

日本語訳で『甘い標本』と名付けられたシリーズ、『Sweet Specimen -Crab-』や『Sweet Specimen -Horseshoe Crab-』は、作品の裏側にもご注目。
どの作品も、360度どこから見てもしっかりと作り込まれています!
スマホなどのインカメ機能や手持ち鏡を使うと、見やすいですよ。
ここに住みたい!砂糖やクリームで作られた、お菓子のお城や小さなお家たち

「2011年に起こった、東日本大震災をきっかけに作り始めました」
「天災などが起きると、この現実の世界も脆く繊細なものであると実感します」
「儚いからこそ美しく、愛おしいこの世界に平穏でいられることは、奇跡ですね」
ここは甘く儚い、お菓子の街『Sugar World』コーナーです。
繊細なデコレーションの施された、お城や小さな家が立ち並んでいます。

「もはや何軒のお菓子の家を建てたか、数え切れません」
「200個は作っている気がします」
「実は、家だけでなくメリーゴーランドやお城もありますよ」
渡辺先生の遊び心も見え隠れする、Sugar Worldコーナーは、小さな子どもに大人気!
「こんな街に住んでみたい!」
お菓子のジオラマを見て、そんな声がたくさん聞こえてきました!

『Coffee Cup Ocean』は、とっても大きなコーヒーカップに表現された、甘い世界地図の一コマです。
パッと見るとデコレーションケーキのようですが、中央に走る船は和船!
コーヒーカップの中にそびえ立つのは、日本式のお城です。
洋菓子の中に日本文化が表現されている、実に面白い作品!
色々なものがチョコに見えてきちゃう!チョコレートの館へようこそ!

「オーギュスト・ロダンの彫刻『考える人』の質感が、チョコレートに似ていると思って作りました」
「それからというもの、ドアやレンガなどの茶色いものがチョコレートに見えています」
そう言って笑う渡辺先生が案内してくださったのは、チョコレートの館『House of Chocolate』のコーナー。
ここは上品で落ち着いた、高級感のある空間です。

会場内に用意された、大きなイチゴを持って撮影ができます。
1粒の大きなイチゴとして使うも良し、半分に割って2人で持つも良し!
自分たちも作品の一部として、素敵なポーズで固まってみてくださいね。
背景となるリアルな剥製も、スイーツと絡められて甘い匂いがしてきそうです。
チョコレートでコーティングされたかのような彫刻の質感は、ぜひ間近でご覧ください!
夜になると動き出す!?動画で観る、作品たちの可愛い世界

「当然ですが、展示している作品は動けません」
「でも、もし作品たちが動き出したら、可愛いだろうと思ったのです」
「夜に、こっそり作品たちが動いていたら?」
「そんなイメージで、シアター作品を作りました」
この『Sweets Theater』は、初のコマ撮りアニメーション作品です。
可愛い作品が、可愛い音と共にカラフルでキュートな世界を作り上げています。
2分40秒の夢の世界へ、どうぞ!
世界遺産に、わびさびの世界……どこでも画になる、クリームよ増殖せよ!

ここは渡辺先生が2007年から撮り続けている、旅するクリーム『Trip of Cream』のコーナー。
誰もが一度は写真などで目にしたことのあるであろう、有名な世界遺産や社寺に「ちょこん!」と置かれてあるのは、5cmほどの大きさのクリームです。
クリームが添えられただけで、違う景色に見えますね!

ここはカレサンスイ『KARESANSUI』。
日本庭園の様式・枯山水をクリームで表現したコーナーです。
枯山水とは水のない庭を指し、本来は石や砂で山水の風景を表現したものです。
真っ白なクリームを同じ形・大きさで規則的に絞り出して作るスイーツ枯山水は、どれも見事!
このシリーズの根底には、岡山出身の日本を代表する作庭家・重森三玲氏のオマージュがあるとのこと。

黒を基調とした空間に、白いクリームが映えるカレサンスイ。
鏡を使って広がりを表現した『増殖』と『石のケーキ』は、まるでホールケーキのよう!
観る人をアッと言わせる、とても美しい作品です。
作品の前にしゃがんで、鏡越しに自分を入れてみましょう。
自分も作品の一部となれる、そんな写真を撮ることもできますよ!
かわいいの具現化!全てがお菓子でできた、甘い空間

お菓子で出来たメルヘンな世界が広がる!
このコーナーを前にすると、多くの方々が感嘆の声を上げます!
中央には、きらきらと光る水面にクリームの波がさざめいている、お菓子の泉『Fountain of sweets』。
美しい白鳥や王子様のカエルに恐竜といった、ファンタジーの世界を象徴するお菓子の生き物たちが、泉でのんびりしています。

ここはお菓子の森『Sanctuary』!
聖域と名付けられたこの森で待つのは、本物そっくりのスイーツでデコレーションされた動物たちです。
ひときわ大きなお菓子の家の中に隠れているのは、ペキニーズのようなワンちゃん!
デコレーションに使われている色や素材にも注目してみてください。
例えば、キツネさんは焼き菓子メインで作られているなどの違いが分かると思います。

お菓子でデコレーションされた、巨大なドラゴン!
全長が4.5mもあり、この特別展で一番大型な展示物です。
「作っていて、特に楽しいのはドラゴンやユニコーン、恐竜たちです」
「実物を見た人が居ないので、色や形などを好きに作ることができます」
「ケーキといえば、ホールケーキだと思い込んでいました」
そう話す幼いころの渡辺先生は、母親が作ってくれた切り株のようなケーキ『ブッシュ・ド・ノエル』を見て、とても驚いたそうです。
渡辺先生は『ケーキといえば丸いカタチ』という固定観念を外すことができたと同時に、『どんな形でも良い』という前向きな発想も手に入れました。
超キュート!おめかしして座りたい、とっても可愛くてゴージャスな撮影スポット!

ここはまるで、ヴェルサイユ宮殿!?
鏡の間『Sweet mirror room』と名付けられたこの空間は、バロック様式をテーマに作られた『ウルトラスイーツバロック(渡辺先生による造語)』のお部屋です。
鏡・棚・机、あらゆるものがスイーツで覆い尽くされたお部屋で、貴族気分に浸ってみてください!

丸いテーブルの装飾にも注目してくださいね!
どことなく見覚えがある配置をしていませんか?
このテーブル、実は世界地図なのです!
日本も表現されていて、愛媛県のある四国はハートで表されていますよ。
フェイクとリアルの融合!写真で表現する、メルヘンな世界観

お菓子の物語『The Tale of Sweets』と名付けられたこのエリアは、人間とスイーツな世界観との融合がなされた不思議な空間。
渡辺先生が衣装や背景を制作し、神話や童話に出てくる当時上人物をモデルさんが演じた写真作品が展示されています。
今回のメインビジュアルに起用された、2012年制作の『Story Ⅲ what adventure waiting for me……?』も、こちらに展示中です。
カラフルでポップな世界に、兜や大仏といった和テイストが散りばめられている作品で歴博にピッタリ!
「知ってる!」の声が多数!名画がスイーツに侵食された世界

お菓子の美術館『Museum of Sweets』は、葛飾北斎やゴッホ、モネにフェルメールなど、超有名な名画や彫刻がスイーツとコラボしている面白いエリアです。
ひときわ大きな作品は江戸時代中期に描かれた、尾形光琳による「紅白梅図屏風」のオマージュで『Chocolate river』。

近付いてよく見てみると……
梅はポップコーン、水流はチョコレートホイップ!
和の題材なので抹茶のマカロンが使われていると思いきや、まるでポッピングシャワーのようなアイスクリームが使われているなど、和と洋の融合が面白い作品です。
スイーツアート×歴博のコラボ!いつもの常設展に溶け込む、甘い作品

渡辺先生の作品は、特別展だけでなく常設展の中にも潜んでいます。
スイーツ盛り盛りの可愛い猫ちゃんや、筆の代わりにクリームを用いた『クリーム書道』による書表現など、見所満載です!
特に夏目漱石の『こころ』初版の装丁にある石鼓文(せっこぶん)のクリーム書道は必見!
今回の特別展のために、渡辺先生が描きおろしたここでしか見られない作品です。

大仏様の『螺髪(らほつ)』が金平糖だったり、ネイルがイチゴだったり。
こんなにもカラフルでキュートな大仏様は、観たことがありません!
昔の時代を表現した、落ち着いた常設展にも自然と溶け込んでいる、渡辺先生の作品たち。
色々な場所にあるので、ぜひ探してみてくださいね。
無限の想像力!こんな世界もアリじゃない?

この特別展では、渡辺先生のスイーツアートを軸に『さまざまな視点で人生を楽しむヒント』に出会えるはず!
ホイップクリームが添えられるだけで、見たことのある景色の雰囲気がガラリと変わってしまう『Trip of Cream』など、私たちにも手軽に取り入れられるヒントの一つ。
いつも通りの日々の中に、ちょこんとホイップクリームを添えてみては。

期間限定のミュージアムショップで購入できる、『クリームペーパーウェイト』。
日常の中にスイーツアートが一つあるだけで、いつもと違うワクワク感を得られます。
「もし、これがお菓子だったら?」
変わり映えのしない毎日でも、そんな目線で観ると面白くなりそうではないですか!
渡辺先生の甘そうなスイーツアートを見て、昔の楽しい記憶を思い出したり、これからの楽しみを想い描いたり。
可愛く美しいだけではない、人の気持ちを解きほぐすかわいいお菓子のミュージアムへ、足を運んでみてくださいね!
特別展「渡辺おさむスイーツアート かわいいお菓子のミュージアム」の情報
開催期間/2025年7月12日(土)~2025年8月31日(日)
開催時間/9:00~17:30(展示室への入室は17時まで)
開催期間中の休館日/夏休み期間中は無休。
観覧料/特別展観覧料が必要
大人(高校生以上)1200円(900円)、65歳以上800円(550
円)、小中学生600円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金
※特別展観覧券で常設展がご覧いただけます。
愛媛県歴史文化博物館の基本情報
店名
愛媛県歴史文化博物館
住所
西予市宇和町卯之町4-11-2
電話番号
営業時間
9:00〜17:30
定休日
月 月曜日/年末年始
駐車場
有
キャッシュレス
【QR決済】PayPay,d払い,その他
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