
色鮮やかな生き物たちが彩る、石村嘉成さんの世界へ

「この動物、本当に動き出しそう!」
愛媛県美術館では「石村嘉成展 いきものだいすき ー2026えひめー」を開催中。代表作をはじめ、最新作や未公開作品など、500点を超える作品が展示される過去最大規模の展覧会です。

会場に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、大きなハシビロコウの作品。鋭い眼差しでこちらを見つめる姿は圧倒的な存在感があり、まるで来場者を迎えてくれているかのようです。思わず足を止め、その存在感に見入ってしまいます。

会場内には、このほかにも色鮮やかな生き物たちを描いた作品がずらり。大胆でありながら繊細な筆づかいで描かれた作品は、それぞれの表情やしぐさまで生き生きと表現されており、まるで生き物たちの息づかいまで伝わってくるようです。

さらに、壁一面に作品が並ぶ迫力満点の「The WALL 243」をはじめ、石村嘉成さんがこれまで出会ってきた生き物たちとの歩みをたどる「Animal History」、制作途中の作品やアトリエの再現展示など、作品の背景に触れられる展示も充実しています。

作品を鑑賞するだけでなく、生き物への深い愛情や創作に込めた想いに触れられるのも、本展ならではの醍醐味といえるでしょう。

展覧会を楽しむために、石村嘉成さんを紹介します。
嘉成さんは2歳で自閉症と診断されました。家族や周囲の支えを受けながら、自立に向けた厳しい療育と向き合い、大好きな生き物への思いを絵で表現し続け、現在では国内外で高い評価を受ける画家として活躍しています。

今回は、石村嘉成さんと父・石村和德さんに、作品づくりへの想いや生き物と向き合う姿勢、創作を支える日々についてお話を伺いました。また、実際に会場を訪れ、展示を見て感じた魅力や見どころも取材しています。

生き物への深い愛情や作品に込められた想いを知ることで、作品の見え方も変わってくるはずです。インタビューと現地取材をもとに「石村嘉成展 いきものだいすき ー2026 えひめー」の見どころをご紹介します。
「生き物が好き」その想いが作品になるまで

嘉成さんの作品は、「どうしてこんなにも生き物たちが生き生きとして見えるのだろう」と思わず見入ってしまいます。色鮮やかな作品からは、生き物たちが今にも動き出しそうな躍動感が伝わってきます。
その理由を今回のインタビューで知ることができました。

インタビューで嘉成さんは、「生き物が好きです。」と何度も笑顔で話してくれました。その想いは今も変わることなく、現在も動物園へ足を運び、生き物たちの表情やしぐさ、動きをじっくり観察しながら創作を続けています。

そして、作品づくりで大切にしていることについて尋ねると、
「生き物の気持ちになって描いています」
と話してくれました。

その言葉を聞いてから作品を見ると、生き物たちの表情や眼差しが印象深く感じられます。
実際に会場で作品を眺めていると、さまざまな生き物たちの力強さが伝わってきます。そのなかで、私が特に印象に残ったのは、生き物たちの「目」でした。

どの作品も優しい眼差しで描かれており、まるで生き物たちの気持ちがそのまま表現されているように感じます。
嘉成さんが大切にしている想いを知ってから作品を見ると、また違った魅力に気づけるかもしれません。

取材を終えると、嘉成さんは自らキッチンへ向かい、コーヒーを淹れて「どうぞ」と手渡してくれました。
その何気ない心遣いからも、嘉成さんの穏やかで温かな人柄が伝わってきました。
才能ではなく、努力の積み重ねが生んだ作品たち

嘉成さんの素晴らしい作品を見て、「生まれ持った才能があるから描けるんだ」と感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、父・石村和德さんは嘉成さんのことを「努力の人」と話します。
「嘉成は才能だけでここまで来たわけではありません。毎日積み重ねてきた結果なんです。」
和德さんの言葉からは、誰よりも近くで嘉成さんを見守り続けてきた父親ならではの思いが伝わってきました。

本格的に絵と向き合うようになったのは高校時代。恩師から、毎日描き続ければ絵が上達すると勧められたことをきっかけに、絵日記を始めました。

嘉成さんは13年以上、一日も欠かさず絵日記を描き続け、現在では約150冊にも及びます。その日にあった出来事に加え、大好きな生き物を描き、色鉛筆で彩った絵日記を毎日の日課として続けています。

日記を書くだけでも簡単ではありません。嘉成さんの絵日記には、その日の出来事をつづる文章だけでなく、生き物の絵が描かれ、一枚一枚が色鮮やかに仕上げられているのです。
展覧会では、13年以上描き続けてきた絵日記も展示されています。現在の色鮮やかな作品とあわせて見ることで、一枚一枚の作品の背景にある努力や歩みを、身近に感じられるはずです。
500点を超える作品が集結!石村嘉成展の見どころを紹介

会場には色鮮やかな生き物たちが並び、まるで嘉成さんの描く世界に入り込んだような空間が広がります。

そのなかでも注目は、243枚の作品で構成された「The WALL 243」です。243枚の作品が壁一面に広がる光景は圧巻。
私も思わず足を止め、どこから見ればいいのか迷ってしまうほど、その迫力に引き込まれました。

一枚一枚をじっくり鑑賞するのはもちろん、少し離れて眺めることで、一つの大きな作品としての迫力も感じられます。

さらに、「The WALL 243」の一部には鏡が組み込まれています。鏡の前に立つと、自分の姿が作品の中に映り込み、自分自身も作品の一部になったような感覚を味わえます。

作品と一緒に写真を撮れば、まるで生き物たちの世界に入り込んだような一枚を残せるのも魅力です。実際に息子たちと写真を撮ってみると、本当に作品の世界へ入り込んだような気分になり、家族の思い出に残る一枚になりました。

鑑賞するだけでなく、作品との一体感を楽しめるのも、「The WALL 243」ならではの醍醐味といえるでしょう。

会場には、天皇皇后両陛下にご覧いただいたホッキョクグマ「ピース」の作品をはじめ、ボルネオオランウータンの「ジェニファー」や「ハヤト」を描いた作品も展示されています。

愛媛で親しまれている動物たちが、嘉成さんならではの色彩でどのように描かれているのかにも注目してみてください。

さらに、長さ26メートルにもおよぶ大作「Animal History」も展示されます。学校の25メートルプールよりも長い作品は、そのスケールの大きさに思わず足を止めて見入ってしまうほどです。

500点を超える作品が並ぶ会場を巡りながら、嘉成さんが描く生き物たちの世界を、ゆっくりと楽しんでみてください。
石村嘉成さんの世界をもっと楽しめる!期間限定の体験や音声ガイドも

石村嘉成展では、作品を鑑賞するだけでなく、嘉成さんの世界をより身近に感じられる体験型の企画も用意されています。子どもから大人まで楽しめる工夫が詰まっているのも、今回の展覧会の魅力です。

期間中の対象日には、「石村嘉成になりきろう!あなたも未来のアーティストに!?」も開催。会場内に再現された嘉成さんのアトリエで、普段制作の際に着用している作務衣やエプロンを身に着け、筆を持って写真撮影ができます。

まるでアーティストになったような気分で、作品づくりの雰囲気を体験できる特別企画です。

また、作品をより深く楽しみたい人には音声ガイドがおすすめです。音声ガイド対応作品には番号が表示されており、手持ちの端末で番号を選ぶだけで、嘉成さん本人による解説を聞くことができます。
一般的な音声ガイドとは異なり、本人が作品への思いや制作時のエピソードを自身の言葉で紹介。キャプションだけでは知ることのできない話を聞きながら作品を鑑賞できます。

実際に息子たちも交代で音声ガイドを聞き、「嘉成さんは優しいね」と話していました。作品に込めた思いを、ご本人の優しい言葉で聞けるのも音声ガイドならではのポイントです。
和德さんによると、まずは自由に作品を鑑賞し、そのあと音声ガイドを聞きながらもう一度会場を巡るのがおすすめとのこと。
同じ作品でも見え方が変わり、新たな発見や楽しさを味わえるそうです。

作品を一度見たあとに音声ガイドを聞きながら巡ることで、「この作品にはそんな思いが込められていたのか」と、世界観を深く感じられるでしょう。
さらに、音声ガイドを利用した人には、嘉成さんが描いた道後温泉本館の非売品オリジナルポストカードをプレゼント。

普段は生き物を題材に作品を描く嘉成さんが風景を描くことは非常に珍しく、ここでしか手に入らない貴重な1枚です。
「作品を展示するだけではなく、テーマパークのように一日楽しめる展覧会にしたい」という思いから生まれたさまざまな企画も、石村嘉成展ならではの魅力です。
作品の鑑賞に加え、参加しながら楽しめる工夫にも注目してみてください。
石村嘉成さんが描く生き物たちの世界を会場で体感しよう!

「石村嘉成展 いきものだいすきー2026えひめー」では、色鮮やかな生き物たちが並ぶ500点を超える作品や243枚の作品で構成された「The WALL 243」、長さ26メートルの大作「Animal History」など、石村嘉成展には見どころが数多く詰まっています。

さらに、作品に込められた思いや制作エピソードを聞ける音声ガイドや、期間限定で開催される「石村嘉成になりきろう!あなたも未来のアーティストに!?」など、作品を鑑賞するだけではない楽しみ方ができるのも特徴です。

会場では、作品集やポストカード、Tシャツなどのオリジナルグッズも販売されています。展覧会を楽しんだ記念に、お気に入りのアイテムを探してみるのもおすすめです。

今回の取材を通して、生き物への深い愛情が作品に込められていることを実感しました。その思いを知ってから作品を眺めると、一つひとつの作品がまた違った表情を見せてくれます。
最後に、石村嘉成さんから、展覧会を楽しみにしている方へメッセージをいただきました。

「展覧会を楽しみにしてくれている皆さん、3年ぶりに愛媛県美術館で展覧会を開催します。そして、ボルネオオランウータンのジェニファーちゃんも新作で登場します。ぜひ見に来てください。お待ちしています。」
ぜひ会場で、石村嘉成さんが描く色彩豊かな生き物たちの世界を体感してみてください。
■石村嘉成展「いきものだいすき ―2026えひめ―」
開催期間/2026年7月18日(土)~9月23日(水・祝)
開催時間/9:40~18:00(入場は17:30まで)
開催期間中の休館日/7月21日(火)、27日(月)、8月4日(火)、10日(月)、17日(月)、24日(月)、31日(月)、9月8日(火)、14日(月)
会場/愛媛県美術館
観覧料/一般(大学生・専門学生含む)/前売券1,600円・当日券1,800円|中・高校生/前売券800円・当日券1,000円|小学生/前売券500円・当日券600円|未就学児無料|障がい者手帳などをお持ちの方と介護者1名は無料|音声ガイド(税込)/900円