衛星データを比較・検討! 農業の専門家が集まり第5回共有会を開催【有人宇宙システム株式会社】

2023.3.22 えひめのあぷり編集部

愛媛県では、アフターコロナを見据え、産業の稼ぐ力の更なる強化のため、デジタル技術やロボットを実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を展開中。

採択事業者のプロジェクトの様子をお届けしています。

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宇宙技術を活用し、愛媛が誇るブランド米「ひめの凜」の栽培モデル構築を目指す有人宇宙システム株式会社(以下:JAMSS)。

DX化とはIT化ではなく、「デジタル技術を使って何ができるのかを考えること」と話す同社は、愛媛県内の生産者と共に自社開発の営農支援アプリ「リモファーム®」を使い実装検証してきた。

今年度最後となる第5回共有会に、トライアングルエヒメ編集部も参加した。

衛星データの分析結果を共有

第5回共有会の主な議題は下記の2つ。

・分析結果共有、研究所ほか専門家との意見交換
・はだか麦、柑橘、たまねぎについての検討

この日参加者したのは、有限会社ジェイ・ウィングファーム、株式会社OCファーム暖々の里、有限会社あぐり、田力本願株式会社(リモート参加)の4社の代表と、愛媛県農林水産研究所や、西予市の農業指導員など、農業分野の専門家。

まずJAMSSより、ひめの凜に関する現地計測結果や衛星データから算出した圃場毎のNDVI値の時系列変化や過去データとの比較結果を提示された。

地域、時期が限られており、栽培モデル構築までの参考要素の一つでしかないが、現段階で既に各圃場での数値の差と、なぜそのような数値になったのか?という意見交換を行う大切なデータになったようだ。

【ひめの凜の衛星データを比較してみて】
衛星データから算出したNDVIの時系列変化について、各社・圃場の数値の差を見ながら意見交換が行われた。2021年と比較し、2022年は田植え日の後から気温が上昇し、7月から8月の値に大きな差が生まれたようだ。

気温の上昇に伴い、葉がよく育ち、NDVI値も高い値が出たのではないか?という推測となった。このNDVI値の違いと、米の品質の関係は、今後重要な深掘りテーマの一つとなった。

【はだか麦の衛星データを比較してみて】
有限会社ジェイ・ウィングファームで実装されているはだか麦については、NDVI画像による生育ムラの確認や時系列変化に加え、松山市の気温や降水量、風速などのデータを基に、赤かび病の事前対策を行えるようなアラートを出すなど、はだか麦専用の要素を加えていきたいという検討内容となった。

はだか麦NDVI時系列変化イメージ

【露地野菜・柑橘の衛星データを比較してみて】
株式会社OCファーム暖々の里で実装されている稲作以外の露地野菜や柑橘については、まず第1歩である「衛星データからの変化抽出」には成功した。

しかしながら、各作物の生育ステージ毎の重要タイミングに合わせたアラート等がだせるかどうかは、さらにデータ分析が必要であり、今後も議論検討を続けることとなった。

今年度の実装を経ての感想

■田力本願株式会社・中野さん

地元のお米を全国に通用するブランド米として確立することが私たちのミッションの一つです。

中でも愛媛県オリジナル品種の「ひめの凜」は食味コンクールで最高クラスの成績を残したこともあり、そのポテンシャルの高さに期待しています。
高い品質を維持しながら生産量を高めることは簡単ではありませんが生産者としてのやりがいがありますし、そこに宇宙の技術が活用されることにロマンを感じています。


■有限会社ジェイ・ウィングファーム・大森さん

今回私たち人間が一番離れている宇宙から土を見るという、考えもしなかったスケールのプロジェクトで、大変興味深いと思いました。
また、データを見ながら他の農家さんや専門家の方々と意見を出し合う場ができたことが僕の中では今年度の一つの成果だと思っています。

これまで経験を頼りにやっていた農業を、数値化することで、今後の栽培計画をどうしていくかを検討できることは大きな意味がありました。
実際に「リモファーム®」を使い、栽培計画を本格的に立てていく、というのは来年度以降の課題かなと思っています。


■有限会社あぐり・大森さん

私たちは、建設業から農業に進出した会社で、設立してからずっと有機農業を行い、自社必要なデータをとり続けてきました。

私は“データはあればあるほど良い”と思っていますので、このプロジェクトを通して、今まで私共も見たことがなかった宇宙からの衛星データと、弊社がこれまで集めてきたデータをうまく活用しながら、愛媛県の有機のやり方が数値化・データ化され、多くの方の役に立てればと思っています。


■株式会社OCファーム暖々の里・長野さん

今回プロジェクトに参加してみて、これまで経験や勘を頼りにしていた農業から、数値とデータを見ながら考えることができたのはとても新鮮でしたし、良い経験になりました。

私の地域でも新規就農者を集めたいという想いがあるので、その方たちに私たちの経験や知識をデータとして伝えられることで、農業=難しいというハードルを下げることができるのではと感じました。
若い方や新規就農者の方が、定着しやすく、地域を支える存在になっていただけるところまで繋げられたらいいなと、期待しています。


■有人宇宙システム株式会社・伊巻さん

写真左からJAMSSの古賀さん・伊巻さん・渡部さん

これまで5回実施した共有会を通して、DXの神髄とも言われる「頭を変える、意識を変える」というところまで進むことができたと感じています。

第1回目では宇宙データってこうやって見るんですよ、という基礎的なところからはじまったのですが、最後にはそれを見ながらみなさんで議論をすることができるまでになりました。それがこの1年間の大きな成果だと感じています。

来年はこの輪をさらに広げて、愛媛県の中のDX化を進めていければと思います。

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まだデータを見ただけでは明確な答えは出ないものの、確かに農業の気づきになるデータを収集することができたと、前向きな声が多くあがった。

今後、さらに必要なデータを精査し、蓄積することで、ひめの凜の栽培モデルが構築され、愛媛のブランド米の生産量拡大と品質維持が叶うことに期待したい。

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