愛媛県では、アフターコロナを見据え、産業の稼ぐ力の更なる強化のため、デジタル技術やロボットを実装し、地域課題の解決にチャレンジする「デジタル実装加速化プロジェクト」を展開中。
採択事業者のプロジェクトの様子をお届けしています。
社会全体でデジタル化に向けた取り組みが加速し、様々な産業・業種でDX実現に向けた対応が模索されている。
少子高齢化の影響を受けやすく、後継者不足と新規就農者の減少などによって、労働者不足が一段と深刻さを増している農業・畜産分野も例外ではない。
IT技術を駆使して、農業の未来を担う若者たちが憧れる“儲かる畜産農業”の実現を目指す取り組みが、西予市ではじまった。
畜産業界の生産性を高めるシステム構築
(チャレンジャー:株式会社ゆうぼく)
今回の実装実験のチャレンジャーは「株式会社ゆうぼく」。
同社は、愛媛県の⽣産頭数の6%にあたる、交雑種300頭・乳⽤種去勢300頭の計600頭と、県内有数規模の肥育頭数を誇り、牧場運営や加工・販売、レストラン運営などに取り組む。
今回は、自社農場を試験導入農場として、牛の事故死の削減、⽣産者の労⼒負担軽減、⽜の管理の質の向上という3つの観点から、畜産業界の生産性を高める「カメラを用いた牛の異常状態の検知システム」を構築・展開する。
牛を事故から守るとともに、収益向上に貢献
牛の畜産は、「和牛繁殖」「乳用酪農」「肉用肥育」の大きく3つに分けられる。
「和牛繁殖」と「乳用酪農」は、一頭あたりの経済的効果が大きいため、センサーによる発情検知・出産検知のシステムが普及し始めている現状がある。
対して「肉用肥育」は、頭数が多く一頭あたりの利益が低いため、センサー系のシステム導入はオーバースペックで高額な費用負担となり、導入があまり進んでいない。
その結果、一頭一頭の確認・監視が行き届きにくく、体調不良の牛や夜間の事故を見落として死亡してしまうケースが見られる。
肉用肥育の夜間の事故死の原因は、「起⽴困難」であることが多い。
肥育⽜は丸々太っているため、⾃分で起き上がれなくなることがある。その状態ではお腹にたまったガスを排出できず、その状態が3時間程度続くと死に⾄ってしまう。
その発生確率は約1~2%。1%と仮定した場合、全国で年間26050頭の牛が死亡していることになり、経済的損失でみると、およそ200億円を大きく超える損失が発生している(一頭あたりの損失は和牛100万円、交雑種40万円、乳用種30万円と想定)。
この「起立困難事故」を解決することで、損失を抑え、収益向上が見込まれるといえる。
自社農場から、合理的で⼈⼯的な「感性」のシステムを試験導入
(実装フィールド:西予市、愛媛県全域、全国)
今回、「株式会社ゆうぼく」が「起立困難事故」を防ぐために構築するのが、「カメラを用いた牛の異常状態の検知システム」だ。
これは、牛の行動を自動監視し、異常時は生産者へアラートを発信することで事故を予防することに加え、夜間や休日の牛の監視をカメラに任せることで、監視という労力を削減することに繋がるといった導入価値がある。
さらに、それらをデータベース上で管理することで、定量的な分析を行い日々の肥育を改善できる。
当プロジェクトでは、まず自社農場でカメラを試験導入し、体調不良時の牛の行動パターンを調査。そのデータをもとに検知システムの構築・精度向上を図る。
そして、試運転や県内農場などにてモニタリングを行いながら、外販向けにハード・ソフト(牛のカメラ監視・データ管理のサービス提供)の最終調整・販売開始を目指す。
生産者による主体的な実装から広がる新しい畜産農業の形
⽣産者でありながら、中⼩企業診断⼠、かつ元メーカーSEであるプロジェクトリーダーを中心に、低コストながら必要最⼩限の機能の実現を目指す「株式会社ゆうぼく」。
新たなシステムの構築・サービスの展開を軸に、⼈⼿をかけない精度の⾼い⽜の肥育、そして県内・全国へと広がる“儲かる農業”の実現に向けた挑戦に今後も目が離せない。
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