
そもそも「予備自衛官」ってなに?
「予備自衛官」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
予備自衛官は、私たちが思い浮かべる自衛官とは少し違います。
平素は、学生や会社員、医療従事者など、それぞれの生活を送りながら、「もしものとき」に備えて訓練を受けている人たちのことです。
「予備自衛官補」は、民間から予備自衛官になる前のステップにあたる制度です。
教育訓練を通して、自衛隊としての基本的な行動や考え方、災害時を想定した動き方などを身につけていきます。
日数や内容は、公募内容や職種によって異なりますが、数日から数週間にわたる訓練のなかで、少しずつ理解を深めていくイメージです。
これらの訓練を修了すると、「予備自衛官」として登録されます。
関わり方もさまざま!予備自衛官の二つの参加スタイル
予備自衛官には大きく分けて二つの参加方法があります。
ひとつが「一般公募」。
年齢などの条件を満たしていれば、特別な資格がなくても応募できます。
一定の期間内に、新隊員と同様の教育訓練を段階的に受けます。
学生や会社員など、これまで自衛隊との関わりのなかった人にとって、最初の一歩として選ばれることの多い参加方法です。
もうひとつが「技能公募」。
こちらは、医療や語学、整備、定められた資格など、これまでに身につけてきた専門的な知識や経験を活かして参加する方法です。
同じ「予備自衛官」という制度でも、学生として学びながら関わる人もいれば、仕事や地域での役割と両立しながら関わる人もいる。
まるで、暮らしのすぐそばにいる自衛隊員といったイメージですね。
今回取材したのは、大学生として過ごしながら予備自衛官補(一般)として訓練に参加する川口さんと、看護師として働きながら予備自衛官(技能)として活動する藤岡さん。
一見わからないけど、実は予備自衛官補と予備自衛官のおふたりの日常をのぞいてみました。
ガッツリは無理だけど自衛隊を体感してみたい方、リアルな自衛官を知りたい方は必見です!
学生生活の合間に、予備自衛官補としての一歩
現在大学2回生の川口さん。
普段は授業に出て課題に追われる、ごく普通の大学生です。
将来は自衛隊への入隊を目指していますが、今の立場は「予備自衛官補(一般)」。
大学に通いながら訓練に参加できる制度があると知り、「今の自分にもできそう」と思ったのが、最初のきっかけでした。

今はまだ、予備自衛官補という段階。
決められた訓練を終えると、正式に予備自衛官になります。
訓練に参加しながら、自衛隊の雰囲気を実際に体験できることも、この制度の魅力のひとつ。
学業と両立しながら、将来に向けて一歩ずつ準備できる。
そんな無理のない関わり方が、今の川口さんの生活スタイルに合っていました。
きっかけはプラモデル?子どもの頃の「好き」が進路のヒントに
川口さんが自衛隊に興味を持ち始めたのは、ずっと前のこと。
小学生の頃から、プラモデルづくりが好きだったといいます。
最初は、自衛隊の飛行機や戦車の形が「かっこいい」と感じたところから。
プラモデルを組み立てたり、自分で調べたりしながら、少しずつ興味が広がっていきました。

「その時点で、自衛官になろうと決めていたわけではなかった」と話す川口さん。
“好き” をたどっていくなかで、日本で防衛に関わる仕事といえば、自衛隊が思い浮かんだそうです。
イベントに足を運び、実際の装備や車両を目にする機会も増えていきました。
そうして関わっていくうちに自衛隊が「身近な存在」だと感じるように。
そんな経験の積み重ねが、自衛隊への関心を「ちょっとした憧れ」から「将来の選択肢」へと変えていったのです。

厳しさだけじゃない!訓練期間中にはゆる〜い時間も
実際に予備自衛官補の訓練に参加してみて、川口さんが感じたのは「思っていた以上に、周りとの連携が大切」ということ。
訓練では、銃を携行して行動する場面もあります。
でも印象に残っているのは、銃を持つこと自体よりも「みんなと行動を共にすること」だったそう。
例えば、基本教練という動作を合わせる訓練があります。
一人だけが前に出たり、逆に遅れたりすると、全体の動きが崩れてしまう。
常に周囲を意識しながら、足並みをそろえて動くことが求められる訓練です。

とはいえ、訓練中ずっと気を張りっぱなし、というわけではありません。
決まった時間に食事をとり、休むときはしっかり休む。
訓練の合間には、同期のみんなで売店までアイスを買いに行くこともあったそうです。
「さっきまで真剣な訓練をしていたのに、急に学生みたいな空気になるんです」と笑う川口さん。
緊張感とリラックスが交互にやってくる、そのメリハリも印象的だったといいます。
迷彩服のまま食事をする光景も、いつの間にか当たり前の日常になっていきました。

「予備自衛官補」のもうひとつの肩書きが現役大学生
ふだんは大学生として授業を受けたり、学生生活を送ったりしながら、定期的に行われる自衛隊のイベントにも参加しています。
なかでも印象に残っているのが、自衛隊のヘリに乗り、上空から景色を見たときの体験。

訓練やイベントを通して川口さんが感じているのは、別世界に足を踏み入れている、という感覚よりも「今の自分の生活の延長線上にある関わり方」だということ。
無理をせず、自分のペースで経験を重ねながら、少しずつ備えていく。
そんな等身大のスタイルが、川口さんにとっての関わり方でした。
現役看護師と予備自衛官の両立スタイルも!
続いて、看護師として働いており、医療分野の経験を活かせる技能公募で予備自衛官になった藤岡さんです。
藤岡さんも、はじめは「予備自衛官補(技能)」として訓練に参加するところからスタート。
災害や有事を想定し、負傷者が出た場面でどう動くかを考える訓練では、日頃の仕事と重なる内容もあったそうです。
また、技能公募であっても、集団行動や座学など、自衛隊としての基本を学ぶ時間もしっかり用意されています。
訓練というと、体力勝負のイメージが強いかもしれませんが、藤岡さん自身は「思っていたほど大変ではなかった」と振り返っていました。

同じ「予備自衛官」という制度でも、立場やライフスタイルによって関わり方はさまざま。
藤岡さんの話からは、川口さんとはまた少し違った関わり方が見えてきました。
仕事と予備自衛官、どうやって両立しているの?
藤岡さんが大切にしているのは、看護師としての仕事と、予備自衛官としての活動を無理なく続けること。
地域の病院で、患者さん一人ひとりと向き合う毎日を送っています。

予備自衛官としての訓練は、あらかじめ候補日が決まっているため、スケジュールを調整しながら参加しているそうです。
忙しい時期もありますが「どちらかを我慢して続けている、という感覚はあまりない」と話す藤岡さん。
今の暮らしを大切にしながら、その延長線上で予備自衛官として関わっていけること。
それが、この活動を続けている理由のひとつでした。

久万高原町で暮らす毎日と、もうひとつの役割
藤岡さんが暮らしているのは、久万高原町。
冬になると、雪がしっかり積もる地域です。
雪の影響で移動や生活が大変な日もありますが、それも含めて「いつもの暮らし」。

地域の病院で働き、患者さんやその家族と向き合う日々。
顔見知りの人も多く、仕事も生活も、地域と自然につながっています。
予備自衛官としての活動も、今の暮らしの延長線上に「もうひとつの役割がある」という感覚に近いそうです。

看護師として地域を支えながら、もう一つの立場では、もしものときに備える。
その距離感こそが、藤岡さんらしいスタイルなのです。
雪深い久万高原町での暮らしを聞いていると「地域で暮らす人が、地域のために関わる」という身近な姿が見えてきました。
看護師の経験が、いざという時の支えになる!
看護師として積み重ねてきた経験が活きる場面もあります。
それは、医療の知識や状況を見ながら判断する力。
日頃の仕事で当たり前のように身につけてきたことが、活動のなかでも役立つことがあるそうです。

これまで実際に、災害現場に出動した経験はありませんが、いざというときに必要とされる場面を想定しながら、訓練に参加しています。
「特別なことをしているという意識はあまりないんですよね」と話す藤岡さん。
病院で患者さんと向き合うときと同じように、その場で求められることを落ち着いて仲間とともに対応していく。
その姿勢は、予備自衛官としての関わり方にもつながっています。

それぞれの暮らしに寄り添う、自衛隊との関わり
大学生として学業に向き合いながら、予備自衛官補として経験を重ねる川口さん。
看護師として地域医療に携わりながら、技能公募で予備自衛官として活動する藤岡さん。
立場や暮らしは違っても、ふたりに共通していたのは「ふつうの生活」を大切にしながら自分に合った形で関わっていることでした。

「予備自衛官」という選択肢が、意外と身近で、誰かの日常のすぐそばにあるものだと知ってもらえたらうれしいです。
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