「えぷり」とは?

愛媛県総合科学博物館 特別展 もっと知りたい!史上最大のニホンカワウソ展 50年の時を経て、今こそ理解すべき愛媛の県獣の全て 【愛媛/新居浜市】

2025.8.12 えひめのあぷり編集部

あなたは愛媛の県獣・ニホンカワウソをどこまで知っていますか?

もふもふのしっぽと愛くるしい顔つきで、近年人気を集めている『カワウソ』!
なかでも『ニホンカワウソ』は、愛媛県の南予地方でよく目撃されていました。

しかし、現在はその目撃情報が途絶え……
ニホンカワウソが、愛媛県の県獣であることを知らない県民の皆様も多いようです。

愛南町のなーしくんもニホンカワウソ!
『とべ動物園』のシンボルマークもニホンカワウソ!

そんな、愛媛にとって馴染み深い存在のニホンカワウソですが……
最後に目撃されてから、今年で50年。

50年に渡って目撃されていない動物は『絶滅した』と判断されてしまいます。
そのため、今年は節目の年なのです。

愛媛県民たるもの、この機会に県獣のニホンカワウソの生態を詳しく知ろうではありませんか!

新居浜の愛媛県総合科学博物館では、特別展『もっと知りたい!史上最大のニホンカワウソ展』が開催中です!
今回は特別に専門学芸員の小林さんに、特別展のイチオシや注目ポイントをお伺いしました。

ラストでは抽選でチケットのプレゼントのお知らせもありますので、ぜひ最後までご覧ください!

今後、もう見られるかどうか分からない!超レアな資料たちを大公開

「史上最大たる所以は、ニホンカワウソの標本の数の多さです!」

専門学芸員の小林さんによると、日本国内にあるニホンカワウソの標本はおよそ160点。
今回の特別展と常設展に展示されているのは、43点。

つまり日本国内の1/4分の標本が展示されているのです!

科博には県獣の貴重な資料として、ニホンカワウソの標本が多数集められていました。
いつもは収蔵庫で大切に保管されているニホンカワウソの標本を、50年の節目に全てを展示するという大きな試みなのです!

始まりは、遡ること71年前。

1954年(昭和29年)2月7日の午前4時ころ。
愛媛県の喜多郡大川村湯場(現在の大洲市)の山奥で、見慣れない動物がトラバサミの罠にかかりました。

その動物こそが、絶滅したと思われていた『ニホンカワウソ』!

特別展の入り口に展示されている『NKU43総選挙 No.1 大洲のお母さん』の標本は、その時に発見されたニホンカワウソです。

ちなみに…
特別展の関連イベントとして、『NKU43(エヌ・ケー・ユー・フォーティー・スリー)総選挙』が開催中です!

館内に展示されている全43体のニホンカワウソの標本の中から、『推しカワウソ』を選んで投票するというもの。

投票は展示室にて8月31日まで行われています。
上位に選ばれたカワウソは、期間限定で常設展に展示されますよ!

特別展・常設展を歩きながら、推しカワウソを見つけてくださいね。

それでは、71年前に発見された『大洲のお母さん』の話に戻りましょう。

展示されている、ニホンカワウソ発見を報道した当時の新聞記事によると……

発見されたニホンカワウソはメス。
体重は一貫九百匁(キログラム換算で、約7.1kg)。
周囲15.5インチ(39.37cm)、体長45.5インチ(115.57)。

「ネコのような格好で黒光りのする鼠色の暖かそうな毛皮におおわれている」と表現されています。

新聞記事を読んで「あれっ?」と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。

…黒光りのする鼠色?
大洲のお母さんの毛皮は、どうみても白色ですよね。

小林さんによると、
「ニホンカワウソの毛皮は、白色ではありません」
「光に当たったことで、退色してしまいました」
…とのこと!

展示される機会の多い標本は、白っぽくなっていくようです。
白色の標本=標本としての人気・価値が高く、露出度が高い傾向にあった様子。

本来の毛皮の色は、トリックアートに描かれたニホンカワウソと同じく茶色です。

ニホンカワウソはどんな生き物だった?

哺乳類で肉食のニホンカワウソは、イタチグループに属します。
イタチグループの中でも、水辺や水中に適した生態系の頂点にいるのが、カワウソです。

「標本の前脚の指先に注目してみてください」
「水かきがあり、水辺の生き物であることが分かりますよ」

そう話す小林さん曰く、カワウソ最大の特長は『細長いカラダと短い手足』、そして『尾の長さ』とのこと!

尾は特に長く、頭から胴の長さの60%が尻尾です。
頭が平たく丸いことも、特徴の一つ。

カワウソの面白さは、サイズが豊富な点!

最も小さいカワウソの仲間は、動物園や水族館で飼育されている『コツメカワウソ』!
頭と胴の長さは41~64cmで、尾長は25~35cmほどです。

最も大きなカワウソの仲間は、南アメリカ大陸のアマゾン川流域に生息する『オオカワウソ』!
頭と胴の長さは85~140cmで、尾長は33~100cmほど。
成人くらいのサイズ感です!

「実は、ラッコもカワウソの仲間なんです」と小林さん。

英語の『otter(オッター)』は、日本語で『カワウソ』を指します。
ラッコは英語で『Sea otter(シー オッター)』なので、海に適したカワウソなのですね。

ちなみに、ニホンカワウソは『Japanese river otter(ジャパニーズ リバー オッター)』です。

観て・触って観察しよう!ニホンカワウソの骨と毛皮

瀬戸内海沿岸で漂流中に生け捕りにされた個体の全身骨格標本です。
喜多郡長浜町櫛生(今の大洲市)で見つかりました。

日本に生息するカワウソは、ユーラシアカワウソだと思われていました。
しかしヨーロッパと韓国に生息しているユーラシアカワウソよりもニホンカワウソの方が、身長・体重ともに大きかったのです。

「犬歯と臼歯の鋭さや、眼窩下孔(がんかかこう)と筋肉の関係から、カワウソは固いものを噛み砕く力に優れていたようです」
「上と下の骨を重ね、ピッタリとかみ合う感覚をぜひ体感してみてください!」

小林さんオススメの骨を触れるコーナーでは、ニホンカワウソの頭の平たさ、牙の鋭さが見てとれます。

この模型は、科博で大切に保管されていたニホンカワウソの標本『NKU43総選挙No.4 城辺の大浜さん(メス)』のCTスキャンデータを用いて、3Dプリンターで作成した複製です。

このコーナーでは、北アメリカに生息する『カナダカワウソ』の毛皮と『???』の毛皮を触り比べることができます。

手触りを確かめつつ、どんな環境で暮らす生き物なのか想像してみてくださいね。

ニホンカワウソって、どんな暮らしをしていたの?

ニホンカワウソの生態は、あまり詳しく判明していません。
生態について深く研究される前に、ニホンカワウソの数は激減してしまいました。

どうやらニホンカワウソは、基本的に群れで暮らしていなかったようです。
メス・オスはそれぞれ独立したなわばりを持ち、川に住んでいる場合は川の長さ15~20kmの範囲で暮らしていました。
意外と広範囲のなわばりの中には、いくつかの泊まり場を作っていて、数日ごとに拠点を変えて暮らしていたようです。

ニホンカワウソは1日に必要とする食事量が多いので、一か所でエサを獲り尽くさないように配慮していたようですね。

ニホンカワウソは、一日に自分の体重の10~20%の量を食べるといわれています。
体重約10kgのニホンカワウソは、一日に1kg~2kgの食料を食べている計算です。

ヒトは、一日に体重のおよそ2%の量を食べるので、その差は歴然!

お魚の入ったバケツを持ち上げてみましょう。
このコーナーでは、ニホンカワウソが食べている量を体感することができますよ。
意外と重くて、驚きです。

ニホンカワウソは基本的に、繁殖の際にしか一緒に行動しません。

特別展では、その珍しい時期に『つがい行動』をしていたオスとメスの標本が展示されています。
また、とても珍しいホルマリン漬けの胎児の標本(およそ妊娠43日頃)も観ることができますよ。

昔は身近な存在だった?!ニホンカワウソと河童とエンコ

日本中で多くの伝説が残っている、妖怪『河童』。
昔は、劫(こう=仏教用語で、非常に長い時間を指す言葉)を経たカワウソは、河童になると信じられていました。

・川や沼などの水辺に住んでいる
・手足に水かきがあり、泳ぎが上手
・頭のてっぺんが平たい
・二本足で立つ

確かに、カワウソの特徴に似ていますね。

愛媛県では、河童のことを『エンコ(猿猴)』と呼びます。
県内各地で、河童やエンコが相撲をしたり、恩返しをしたりしていますよ。

河童が狛犬として置かれているのは、日本でも西予市明浜町高山 若宮神社だけのようです。
英語表記で『Guardian lion-dogs of Kappa』と呼ばれる、河童狛犬の複製が手に持っているのは、愛媛名物の鯛ですよ!

『獺=かわうそ』は身近だった!獺の名が付く、お酒や地名たち

科博で初めて?お酒が展示されました。
その名も、世界的に有名な日本酒『獺祭(だっさい)』!

獺祭を醸している酒造会社は、山口県岩国市周東町の獺越(おそごえ)にあります。
「歳をとったカワウソが、子どもを化かして追い越してきた」
そんな伝承に基づいた地名だそうです。

獺越(オソゴエ)と名付いた地名は各地にあり、昔はカワウソが身近な存在だったことが伺えますね。

愛媛・松山の偉人として有名な俳人・正岡子規。

子規は数多くのペンネームを持っていました。
その中の一つに『獺祭書屋主人(だっさいしょおくしゅじん)』というものがあります。

獺祭とは、カワウソが捕まえた獲物の魚を並べている様子からその名が付きました。
子規が様々な文献を部屋に広げ、研究している様子を獺祭に見立てて名付けたようです。

日本酒の獺祭は、地元の地名・獺越はもちろんのこと、正岡子規の『獺祭書屋主人』にも因んで名づけられました。
俳句の革新を掲げ、近代俳句の世界を構築した正岡子規の姿勢に感銘を受け、「これまでにない新しい日本酒を生み出す」という想いを重ねて名付けられたそうですよ。

芭蕉や蝶夢、文児といった過去の偉大な俳人たちも、獺(カワウソ)について詠んできました。

特別展には、俳句コーナーを設置しています。
初めての方にも書きやすいように、俳句の作り方や季語などをまとめたワークシートもありますよ。

愛媛の県獣でもあり所縁の多いカワウソを題材に、ここで一句詠んでみませんか?

カワウソが減った理由は、毛皮と住環境の変化

科博が大切に保管してきた、珍しい『ニホンカワウソのえり巻き』。

小林さんによると、
「85年以上前から保管されていて、ニホンカワウソ関連の資料の中でも最古の資料!」
「美しい色や形を保っているえり巻きは珍しく、とても貴重な資料です」とのこと。

日本各地に生息していたニホンカワウソは、主に毛皮と内臓が利用されていました。
毛皮は、長い刺し毛を取り除いた綿毛の保温性が優れていたため、服の裏地や襟元の保温のために乱獲されていたようです。

ニホンカワウソが減った理由は、毛皮目的の乱獲だけではありませんでした。
人間とニホンカワウソの生活環境が重なっていたことも、大きな原因の一つです。

1965年、南宇和郡御荘町でハマチ養殖業者の金網に、2匹のニホンカワウソが引っかかっていました。
そのころ養殖中の魚が次々と食べられていて、当時の価格で200~300万円の被害が出ていたそうです。

国の特別天然記念物に指定されているため、逃がすしかないものの……
逃がしたところで、また魚を食べられてしまう可能性があるため養殖業の方も困っていた様子が新聞記事からも伺えます。

魚を追いかけて泳いでいたニホンカワウソが、海底から垂直に立てて張られた漁具の『建網(たてあみ)』に気付かず突進し、絡まってしまうという事故も多くありました。

小林さんによると、
「1960年頃には、水中で見え難く、破れにくいナイロン製の刺し網が普及しました」
「ヒトの食料を安定的に確保するための技術革新ですが、ニホンカワウソには生き抜くことが厳しい環境になってしまいましたね」とのこと。

科博が保管している標本で、建網や魚籠など漁具関連で捕まった個体は半分近い20体に上ります。

戦後の復興期を迎えた日本では、各地で陸路整備のために海岸沿いが開発されたり、工業発展のために排水処理がおざなりなまま、海岸沿いに工場が乱立されてしまったり…
ニホンカワウソの住環境が大きく変わったことも、個体数の減少に影響したと考えられています。

何とか見つけられた個体を動物園で飼育をしようと試みるも、成功したのは4頭だけでした。
生息地の南予から動物園まで運ぶ途中に衰弱死することも多く、保護がとても困難だったことが伺えます。

1928年(昭和3年)に保護獣となったニホンカワウソでしたが、2012年(平成24年)には、国による絶滅宣言がされてしまいました。

1975年、愛媛県宇和島市九島亀ノ浦亀田で確認された『No.30 九島のラストカワウソ』を最後に、50年間ニホンカワウソは愛媛で見つかっていません。

特別展では、絶滅の危機を迎えるも『再導入(保護・増殖して自然界に戻すこと)』が成功し、野生復帰が叶ったトキやコウノトリの事例が展示されています。

地域の人々に愛されていたことで、絶滅を免れたトキとコウノトリ。

「ニホンカワウソも多くの人にその存在を知ってもらい、愛着をもってもらえたら…」
「まだ愛媛のどこかに居るかもしれない、ニホンカワウソも絶滅の危機を乗り越えられるかもしれませんよね」と小林さん。

ニホンカワウソのような動物を見かけたり、眠っていたニホンカワウソの資料を見かけた方は、科博までご連絡を!

ニホンカワウソになれちゃう『なりきりフォトブース』は、大人用と子供用が用意されてて、とっても可愛いです!
特別展の記念に一枚、どうですか?

今回の特別展も見所が多く、とても全てをお伝えすることはできませんでした。
少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ実際に足を運んでみてください!
愛媛の県獣・ニホンカワウソの可愛らしさを、観て触って確かめて!

観覧チケットをプレゼント!

今回、特別展「もっと知りたい!史上最大のニホンカワウソ展」開催を記念して、招待チケットをご用意しました!
抽選でペア10組・20名様にプレゼントします!

なお、応募時に合言葉の入力が必要です。
その合言葉は… 【九島のラストカワウソ】!
記事を最後まで読んだあなたにだけお伝えします。応募アンケ―トでぜひ所定欄に入力してください。

★応募締切:8/24(日)
【利用期限】開催期間中~9月23日(火・祝)迄、開館日にご利用いただけます。
【当選発表】当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
【利用方法】窓口でえぷり当選の旨をお伝えし、SPCシール付チケットをお渡し下さい。
※常設展+特別展の両展示をご覧になれるチケットです。

★プレゼント応募はこちらから

特別展「もっと知りたい!史上最大のニホンカワウソ展」の情報

開催日時/2025年7月12日(土)~9月23日(火・祝) 開催時間/9:00~17:30(入場は17:00まで) 開催場所/愛媛県総合科学博物館 企画展示室 開催住所/愛媛県新居浜市大生院2133-2 駐車場/あり 普通車300台 料金/特別展のみ:高校生以上1,000円 / 65歳以上900円 / 小中学生700円 特別展+常設展:高校生以上1,300円 / 65歳以上1,000円 / 小中学生700円 お問い合わせ/愛媛県総合科学博物館 電話/0897-40-4100

特別展「もっと知りたい!史上最大のニホンカワウソ展」 公式HPはこちら

愛媛県総合科学博物館公式HPはこちら

愛媛県総合科学博物館の基本情報

店名

愛媛県総合科学博物館

住所

新居浜市大生院2133-2

電話番号

0897-40-4100

営業時間

9:00~17:30

定休日

月 祝日・第一月曜は開館、翌平日休館、年末年始 (12月29日~1月1日)休館

駐車場

キャッシュレス

【QR決済】PayPay,d払い,その他

CHECK

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